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ソニーは63年ぶり、楽天は22年ぶり。社名変更で企業は成長するか?

ソニーは63年ぶり、楽天は22年ぶり。社名変更で企業は成長するか?

創業者の井深大氏(右)と盛田昭夫氏の映像を背にするソニーの吉田社長

新年度が始まる4月には多くの企業で組織改正、事業再編が予定されている。ソニーは63年ぶり、楽天は22年ぶりに社名を変更。富士ゼロックスも59年ぶりに社名から「ゼロックス」を外す。また、りそなホールディングス(HD)による関西みらいフィナンシャルグループ(FG)の完全子会社化や、携帯通信各社による乗り換え手数料無料化もスタート。各社が新しい枠組みで成長軌道を描く。

ソニー→ソニーグループ

ソニーは4月1日付で商号を「ソニーグループ」に変更する。同社の社名変更は1958年に前身の「東京通信工業」からソニーへ変えて以来63年ぶり。人材・技術への投資や事業間のシナジー(相乗効果)創出促進などに専念するため、テレビやスマートフォンなどのエレクトロニクス事業は分離する。

エレキ事業の分離は、金融事業を手がけるソニーフィナンシャルHDの完全子会社化と併せた体制見直しの一環。

これにより、同社の主力事業は同列に並ぶ体制となる。見直しの目的について、吉田憲一郎会長兼社長最高経営責任者(CEO)は2020年の株主総会で「事業の進化を促し多様なポートフォリオの強みを生かすため」と説明している。

エレキ事業を構成する子会社は合併した上で、長年親しまれた「ソニー」の商号を承継する。グループの顔とも言える立場だが、業績面では近年ゲームや音楽などのコンテンツビジネスの勢いが強い。一方で、ソニーが技術追求のテーマとして掲げる“3R(リアリティー、リアルタイム、リモート)”には欠かせない存在でもある。体制再構築の成果をどのような形で挙げられるか注目が集まる。

楽天→楽天グループ

三木谷氏は会長兼社長を続投する

楽天は、グループ経営の強化を目的に、4月1日付で「楽天グループ」に社名変更する。同社は主力事業である「楽天市場」などの電子商取引(EC)のほか、子会社を通じて金融やスポーツ、携帯通信など多様な事業を手がける。今後は子会社への権限委譲を進め、出資や資金調達などの意思決定を迅速化して競争力を高める。

社名変更は1999年にエム・ディー・エムから楽天に改めて以来22年ぶり。楽天グループは引き続きECなどのインターネット事業を手がけ、三木谷浩史氏が会長兼社長を続投する。

12日には日本郵政や中国・騰訊(テンセント)子会社などを引受先とする総額2423億円の第三者割当増資を発表。大型投資が必要な携帯通信や物流では自前主義を脱却し、資本提携を進めるとみられる。

三木谷会長兼社長は「これまで親会社が集約的に資金調達を行ってきたが、今後はいろいろな形が考えられる」とする。

携帯通信の基地局投資が足かせとなり、楽天の20年12月期の通期業績は1141億円の当期赤字だった。同社は携帯通信を自社経済圏への入り口に位置づける。グループ経営強化により、携帯通信サービスの契約者のEC利用を促進し、収益を改善できるかが問われる。

りそな→関西みらい完全子会社化

りそなHDは4月1日、株式を従来51%保有していた関西みらいFGを完全子会社化する。関西みらいFGは30日、上場廃止になった。狙いは親子上場解消による意思決定の迅速化とコスト削減だ。

南昌宏りそなHD社長は「意思決定と成長のスピードを上げる」としつつ、「関西みらいFGのコスト構造はまだメスを入れるところがある」とも指摘する。

関西みらいFGは上場廃止でりそなHDと運営を一体化し、本部機能をスリム化できる。経営スピード向上とコスト削減につながる。

りそなHDは23年3月期までに、関西みらいFGとのシナジー効果110億円を見込んでおり、完全子会社化による効率化で達成を目指す。

りそなHDはグループ4銀行の国内店舗数が計830(20年9月末時点)で、関西は最多の515。関西みらい銀の存在が大きい。りそな銀も関西に多くの店舗がある。両行は店舗共同化を進めており、完全子会社化で、りそな銀の信託や不動産仲介のノウハウを関西みらい銀が吸収しやすくなる効果が期待できる。

関西みらいFGを中間持ち株会社として残すのは、地域顧客に向き合う姿勢を示すためで将来の地銀再編の受け皿になることも視野に入れる。菅哲哉関西みらいFG社長は「地銀を取り巻く環境は厳しい。時代の荒波を乗り越えるための選択肢の一つ」としている。

富士ゼロ→富士フイルムビジネスイノベ

新社名にふさわしいイノベーションに期待(富士ゼロックス本社=東京都港区)

富士ゼロックスは、4月1日付で社名を「富士フイルムビジネスイノベーション」に変更し、新体制で臨む。米ゼロックスと交わしているブランドや販売地域に関する技術契約を3月末で解消。1962年の設立当初から親しまれてきた“ゼロックス”ブランドとの決別となる。

富士ゼロックスは、同契約の解消に伴い、4月からアジア太平洋地域のみにとどまっていた販売圏が欧米まで拡大する。まずOEM(相手先ブランド)供給を通じ欧米市場の土台固めをし、今後の自社ブランドによる販売につなげる方針だ。20年12月時点で、「OEM供給先として既に何社か契約している」(玉井光一社長)。

ただ、欧米は成熟市場。新ブランドによる参入のハードルが高いのは確かだ。さらに、欧米は国内以上にテレワークが進んでおり、コロナ禍でオフィス複合機の印刷量の低下が著しい。

ペーパーレス化などの影響で複合機市場は縮小が進み、逆風下での船出となる富士フイルムビジネスイノベーション。新社名にふさわしい“イノベーション”に期待が高まる。

携帯乗り換え→無料

手数料無料化が競争の促進に(イメージ)

NTTドコモとKDDIは4月1日に、携帯通信会社を変更しても従来の番号を使える同番号移行制度(MNP)による転出手数料を廃止する。従来は3000円(消費税抜き)だが、受付窓口が店頭・ウェブ・コールセンターのいずれの場合も無料とする。

背景には、MNP転出手数料が消費者の自由なサービス選択を阻害しかねないと指摘されてきたことがある。そこで総務省は、消費者がウェブでMNP手続きをする場合は無料に、対面や電話で行う場合は1000円以下にする指針を決定。4月1日から適用する。

楽天モバイルは20年11月4日から、ソフトバンクは21年3月17日から、それぞれMNP転出手数料を無料化した。各社が乗り換えの障壁を下げたことに加え、ドコモの「アハモ」をはじめとする格安な新料金プランの提供も始まった。今後は消費者が自分に合ったサービスを能動的に選ぶ機運が高まる可能性がありそうだ。

日刊工業新聞2021年4月1日

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