シンプルなイラストで理解する「からくり設計」
熊谷英樹氏の最新作『必携「からくり設計」メカニズム定石集 Part2 ―図でわかる簡易自動化の勘どころ―』の発行を記念し、熊谷氏の人気書籍『今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしいシーケンス制御の本』(共著)と、『必携 シーケンス制御プログラム定石集 Part2 ―機構図付き―』、『必携「からくり設計」メカニズム定石集 Part2』の一部を紹介します。
今日は最新作『必携「からくり設計」メカニズム定石集 Part2』からの抜粋です。『必携「からくり設計」メカニズム定石集』の第2弾として、数々の「からくり設計」を解説します。シンプルなイラストが、専門的な内容の理解を促します。
1つのアクチュエータで2つの動作をさせるにはスプリングフォローを使う
定石の要旨1つのアクチュエータの全ストロークのうちの前半と後半で装置の異なる部分を動かすようなタイミングをつくるには、スプリングフォローを使います。
(1)スプリングフォロー図1は、スプリングフォローを使って出力ブロックの動きを途中で停止できるようにしたものです。出力ブロックのカムフォロワはスプリングの力でレバーに接触しています。クランクを回転してレバーを動かすと、出力ブロックもレバーと一緒に前進します。ストッパが前にあるので、出力ブロックはストッパで停止しますが、レバーはさらに回転させることができます。
この出力ブロックはスプリングによってレバーの動きに追従して、任意の位置で停止することができるスプリングフォローになっています。「スプリングフォロー」とは、スプリングを使って相手の動きに追従することを意味します。
(2)ヒールスプリングフォロー図2は、ヒールスプリングフォローの簡単な例です。シリンダの1往復の動作から、フォローブロックによる短いストロークと、空気圧シリンダ自身の長いストロークの2つのタイミングをつくることができます。
空気圧シリンダのストロークをy として、フォローブロックが動けるストロークをxとしてみます。
空気圧シリンダが前進を開始するとフォローブロックも同時に前進して、xの距離だけ前進するとストッパに当ってフォローブロックは停止します。
シリンダはさらに先に進んでyの位置まで移動します。その後シリンダが後退するときは、まずフォローブロックは止まったまま、シリンダだけが後退します。シリンダがy-xの距離だけ後退するとフォローブロックにシリンダヘッドが当って、フォローブロックはシリンダとともに元の位置まで後退します。シリンダヘッドの動きに後ろからフォローブロックがついてくるような動作をするので、このようなスプリングの使い方をしたものを「ヒールスプリングフォロー」と呼びます。
(3)2つのタイミングで動くメカニズムもう1つの例として、前半ではユニットを前進させて後半ではユニットの一部を下降させるというからくりをつくることを考えてみます。
図3のシリンダの先にはプッシャがついていて、シリンダの動きと一緒に前後に移動します。
シリンダが前進するとフォローブロックがスプリング1で引っ張られて、図の右方向に移動します。フォローブロックはストッパ1に当たると停止します。その後もシリンダは前進してプッシャがレバーに当たるとツールを押し下げるように動作します。
このようにスプリングフォローを使うと、1つのアクチュエータでタイミングの異なる2つの動作ができるようになります。
(「必携『からくり設計』メカニズム定石集 Part2」より一部抜粋)<書籍紹介>
好評を博しているロングセラー「必携『からくり設計』メカニズム定石集」(2017年6月発行)の第2弾。基本となるメカニズムの運動特性や力特性などを“定石”として、それらの組み合わせでできるさまざまな「からくり設計」を立体的な構造図などを使いわかりやすく解説する。
書名:必携「からくり設計」メカニズム定石集 Part2
著者名:熊谷英樹
判型:B5判
総頁数:184頁
税込み価格:2,750円
<販売サイト>
Amazon
Rakutenブックス
Yahoo!ショッピング
日刊工業新聞ブックストア
<著者>
熊谷 英樹(くまがい ひでき)
1981年 慶應義塾大学工学部電気工学科卒業。
1983年 慶應義塾大学大学院電気工学専攻修了。住友商事株式会社入社。
1988年 株式会社新興技術研究所入社。
現在、株式会社新興技術研究所専務取締役、日本教育企画株式会社代表取締役。山梨県産業技術短期大学校非常勤講師、自動化推進協会理事、高齢・障害・求職者雇用支援機構非常勤講師。
<主な著書>
「ゼロからはじめるシーケンス制御」日刊工業新聞社、2001年
「必携 シーケンス制御プログラム定石集―機構図付き」日刊工業新聞社、2003年
「ゼロからはじめるシーケンスプログラム」日刊工業新聞社、2006年
「絵とき『PLC制御』基礎のきそ」日刊工業新聞社、2007年
「MATLABと実験でわかるはじめての自動制御」日刊工業新聞社、2008年
「新・実践自動化機構図解集―ものづくりの要素と機械システム」日刊工業新聞社、2010年
「実務に役立つ自動機設計ABC」日刊工業新聞社、2010年
「基礎からの自動制御と実装テクニック」技術評論社、2011年
「トコトンやさしいシーケンス制御の本」日刊工業新聞社、2012年
「熊谷英樹のシーケンス道場 シーケンス制御プログラムの極意」日刊工業新聞社、2014年
「必携 シーケンス制御プログラム定石集 Part2―機構図付き―」日刊工業新聞社、2015年
「必携『からくり設計』メカニズム定石集―ゼロからはじめる簡易自動化」日刊工業新聞社、2017年
「ゼロからはじめるPID制御」日刊工業新聞社、2018年 ほか多数
<目次抜粋>
第1章 レバーを使った運動変換と伝達のメカニズム
定石1の1 運動方向を変換するにはレバーを使う
定石1の2 レバーを直動出力に連結するにはリンク棒を使う
第2章 リンクを使った回転するメカニズム
定石2の1 リンクを使えばテーブルをコンパクトに回転できる
定石2の2 テーブルを大きく回転するにはグルダを使う
第3章 容器の中をかき混ぜるメカニズム
定石3の1 へらを往復させてかき混ぜるにはレバーとクランクを使う
定石3の2 回転しながら周回するには固定歯車を使う
第4章 スプリングを使って叩くメカニズム
定石4の1 クランクとスプリングを使うと連続して叩くメカニズムができる
定石4の2 欠歯ラックピニオンを使うと直進動作で叩くメカニズムができる
第5章 ワークをクランプするメカニズム
定石5の1 偏心カムを使うと簡単にクランプできる
定石5の2 クランプでワークを傷つけないようにするにはクランパを入れる
第6章 スプリングを使いワークを保持するメカニズム
定石6の1 てことスプリングを使ったクランプ
定石6の2 スプリングを使ったクランプとクランプの解除
第7章 つぶしたり切断したりするメカニズム
定石7の1 つぶす力を簡単に増力するにはねじを使う
定石7の2 つぶすメカニズムにはてこを使う
第8章 拘束リンク棒を使った多重運動
定石8の1 多重運動をつくるには拘束リンク棒を使う
定石8の2 水平回転しながらチャックの向きを変えるには拘束リンク棒を使う
第9章 ワークやパレットを搬送するメカニズム
定石9の1 移動端でテーブルを傾けるには可動テーブルとリンク機構を使う
定石9の2 下降端でテーブルを傾けるにはデテルを使う
第10章 ヒールスプリングフォローを使った複合動作
定石10の1 1つのアクチュエータで2つの動作をさせるにはスプリングフォローを使う
定石10の2 ヒールスプリングフォローを使えばダブルアクションになる
第11章 汎用メカニズムを使った同期システム
定石11の1 1つのモータで複数のユニットを駆動するには汎用メカニズムを組み合わせる
定石11の2 複数のユニットを同期して動かすには動作タイミングを考える
第12章 カムを使った運動変換
定石12の1 カム出力の前進端と後退端にはドゥエルをつける
定石12の2 円筒カムは板カムを丸めるとできる
第13章 カム出力の連結と同期システム
定石13の1 カムの出力を直接取り出すには直動ガイドを組み合わせる
定石13の2 カムの運動出力を取り出すにはレバーを使う
第14章 複数軸を独立して動作させるからくりとカムを使った駆動方法
定石14の1 直交型のP&Pユニットをカムで動かすには直交する
定石14の2 2軸を独立させるスカラ型のユニットは2つの水平軸をリンクを使って独立させる