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米欧で「電池生産」現地化進む。米国はEV・充電インフラに19兆円投資

米欧で車載向けを中心に電池のサプライチェーン(供給網)を現地化する動きが広がる。米国は2030年までの実現を目指し、欧州では欧州連合(EU)が電池生産の支援や関連ルールの形成に意欲的だ。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向けて電動車シフトが進む中、電池の需要は急拡大する。電池調達は国の安全保障にも影響を与える。(日下宗大)

米バイデン政権は米中対立の対応で、電池や半導体など重要品目のサプライチェーンの見直しに力を入れる。電池需要の喚起策として、電気自動車(EV)や充電インフラの整備などに約19兆円を投じる方針だ。EVの充電施設を50万カ所設置するほか、EV購入の税制優遇の拡充を掲げる。

米国では自動車メーカーと韓国電池メーカーの協業が加速している。電池生産で米ゼネラルモーターズ(GM)と韓国LG化学が合弁事業を展開。さらに米フォード・モーターは5月、韓国SKイノベーションと合弁会社の設立を発表した。20年代半ばから米国内で年約60ギガワット時(ギガは10億)を生産する計画だ。

欧州、補助金8000億円規模

欧州では韓国電池メーカー、車載用電池で世界最大手の中国寧徳時代新能源科技(CATL)、米テスラの元幹部が立ち上げたスウェーデンのノースボルトなど、多くの電池メーカーが工場新設を進める。日本の経済産業省の資料によると、欧州では電池の生産支援や研究開発支援の補助金が計8000億円規模に達する。

さらにEUは電池の材料段階からリサイクルまでのライフサイクル全体の二酸化炭素(CO2)排出量の計測方法などのテーマで電池産業のルール形成にも意欲的だ。電源構成でCO2排出係数の少ない水力発電が主の北欧や、原子力発電が主の仏国など、域内の電池製造が有利になる内容で議論が進む。

自動車産業は従来、エンジン技術の競争だった。しかしカーボンニュートラル実現に向けた急激なEVシフトで、今後は電池の調達力が勝負を左右するようになる。電池の安定調達のため、自動車メーカーだけでなく、各国が政策的な支援に力を入れる。

電池は自動車以外でも需要が広がる。カーボンニュートラル実現に向け、再生可能エネルギーを安定的に提供できる定置型蓄電池が重要となる。エネルギー安全保障を考える上でも重要部品だ。さらに米国が6月に発表した「リチウムバッテリー国家計画」では電池の利用目的に「国防」も挙げた。

産業政策のほか安全保障でも「戦略物資」となった電池。米欧中が生産能力を拡大させるなか、日本は後れを取っている。経産省などの資料によると、25年の電池生産能力(年産)見込みで日本は20年比約1・8倍の39ギガワット時。一方、米国は同約4倍の205ギガワット時、欧州は同11倍の726ギガワット時、中国は同約4倍の754ギガワット時だ。

日本は6月、新たに策定した成長戦略で30年までに車載用電池の生産能力を100ギガワット時に高める方針を掲げた。政府には生産支援の拡充を加速し、ルール形成でもリードする姿勢が求められる。

日刊工業新聞2021年7月26日

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