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朝ドラヒロイン「あさ」と「浅子」-おてんば娘の本当の素顔

文=東野りか(ライター・編集者)“九転び十起き”のポリシーをたどる
朝ドラヒロイン「あさ」と「浅子」-おてんば娘の本当の素顔

最先端の洋装を自然に着こなしていた浅子(写真は日本女子大学所蔵)


人生を支えた家庭の愛情、そして夫の愛情


 朝ドラで重要な役どころを担う、姉の春についてのページがあるのも見逃せない。春は加島屋に匹敵する豪商・天王寺屋に嫁したが、嫁ぎ先は没落した上、彼女は早世。春についての資料が全くなく、その子孫は途絶えたとされていたが、存在していることが判明した。ちなみに春の子孫と最初にコンタクトをとったのは、NHKのドラマ制作者ではなく、「主婦と生活社」の担当編集者である。

 加島屋が所有していた、滅多に展示されることのない「紅葉呉器茶碗」(現在は泉屋博古館分館所蔵)の撮りおろしにも成功したのも、担当編集者の努力のたまもの。このようなパッションがなければ、よりオリジナリティが際立つ本をつくることは不可能だったに違いない。

 最後に。何よりも伝えたいのは、彼女のハンパない人生を支えたのは、家庭の愛情であったこと。家同士の約束で結婚させられた夫の信五郎とは夫婦仲が良かった。浅子自身は娘を1人産んだだけだったが、夫の妾が産んだ子どもたちにも愛情を注いだという。

 夫は浅子を人間として尊敬していたようであり、それゆえ仕事に明け暮れた女性にありがちな家庭的な不幸や孤独の影がない。ありえないほど個性が強いキャラクターの史実本を編集しながらも、なぜかほのぼのとした気分になったのは、そのせいだったのかもしれない。
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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
自分も正直、朝ドラが始まるまでは「広岡浅子」という存在を知らなかった。ドラマの脚本は史実とは異なる部分も多いようだが、波瑠さんヒロイン「あさ」を実に魅力的な人物として演じている。波瑠さんは過去3回、朝ドラのオーディションで落ちて今回が4回目で手にしたヒロインの座。「絶対に諦めない」という浅子を演じるためにこれまで受からなかったのではないか、と思わずにはいられない。ドラマの中で、あさの祖父があさに向かって「なんでや?と思う人間が世の中を変えていく」というそ台詞がとても印象に残っている。ドラマを見ている人も見ていない人も、「おてんば娘の九転び十起きー」で浅子の魅力に触れてみては。

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