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ハグ、脳トレ…ペッパーの活躍を広げるアプリ大集合

「pepper app challenge 2015Winter」、「pepper innovation challenge 2015」開催
ハグ、脳トレ…ペッパーの活躍を広げるアプリ大集合

HUG

 コミュニケーションロボット「ペッパー」のアプリ開発を競うコンテストが開かれた。総勢263のアプリの中から最優秀賞に選ばれたのはバーチャルリアリティーでペッパーに乗り移る「HUG」と、脳活性化アプリ「いきいき脳体操」。HUGの開発者はペッパーを使うことで寝たきりの祖母を自身の結婚式に参加させた。いきいき脳体操は介護施設などで高齢者の脳を活性化することを証明した世界初のロボットアプリになった。ペッパーの開発コミュニティーは質と量ともに拡大している。

優勝は「HUG」


 「ロボットが一家に一台、誰もがロボットクリエイター」を目標に、ソフトバンクはロボット文化を根付かせようと壮大な挑戦をしている。「アトリエ秋葉原」では毎週ハッカソンを開催し、アプリ開発者の輪を広げてきた。ワークショップを含め、これまで7500人が参加している。簡単にロボアプリを開発できるようにソフト環境を整え、開発したアプリで稼げるようにビジネス環境も整備している。小学生がロボアプリを開発したり、小売りや銀行でペッパーが接客を始めるなど、徐々に環境が整いつつある。

 これに呼応するようにコンテストには多彩なロボアプリが集まった。家庭向けアプリを競う「pepper app challenge 2015Winter」には176件、ビジネス用アプリを競う「pepper innovation challenge 2015」には87件のアプリが出来を競った。ソフトバンクロボティクスの吉田健一事業推進本部長は「どのアプリも極めてレベルが高く、順位がつけられない」とうれしい悲鳴をあげる。

 家庭向けアプリの激戦を制した「HUG」はペッパーに乗り移って、離れた人と対話する遠隔コミュニケーションアプリだ。ヘッドマウントディスプレー(HMD)でペッパーの視ている世界を体験できる。HMDのジャイロセンサーに合わせてペッパーが首を振り、キネクトなどで操縦者の上半身を計測し、離れたペッパーにも同じ動きをさせる。開発リーダーを務めたダックリングズ(東京都渋谷区)の高木紀和社長は、HUGで自身の祖母を結婚式に招いた。寝たきりの祖母が結婚式で新婦を抱きしめながら結婚を祝福した。

 相手を抱きしめ、手を握って感謝を伝えられるのはヒト型のペッパーならではの機能だ。タブレットと移動台車を組み合わせた遠隔操作ロボには難しい。高木社長は「高齢化社会は必ず来る。身近な人が動けなくなっていく。寝たきりになったり、遠出ができなくなっても、外に出ていろんな人と話したい。この問題は必ず解決しないといけないが、技術課題がまだまだある。力をかしてほしい」と投げかけた。

テレビ用コンテンツをペッパーで


 ビジネス用アプリでは仙台放送とフューブライト・コミュニケーションズ(東京都港区)の「いきいき脳体操」が最優秀に輝いた。読み書き計算を組み合わせたゲームをペッパーと一緒に解くことで認知症予防を狙っている。「いきいき脳体操」は仙台放送が2004年から放送している。川島隆太東北大教授が監修し、脳の活性化が証明されている。テレビ用のコンテンツをペッパー仕様に改良して、介護施設で大勢で楽しめるコンテンツに仕上げた。

 ペッパーが司会となりクイズなどのプログラムを進めていく。ペッパーが名前を呼んで答えを促すだけで、参加者との距離がぐっと近くなる。ニュービジネス開発局の太田茂プロデューサーは「メディアの人間はその場を盛り上げて終わりになりがちだが、我々は効果を実証していきたい」と意気込む。すでに脳の活性化は実証された。今後介護負担の軽減などについてもデータを積み上げていく。放送局が現場での課題解決に挑戦している。

 さらに仙台放送にとってはロボットメディアへの挑戦でもある。太田プロデューサーは「良いコンテンツが良いメディアを育てる」という。「介護などの人材不足は深刻で、女性が活躍しても足りない。その次は高齢者自身。その次はヒューマノイド。これは必然の流れだ」と強調する。ペッパーの開発コミュニティーには先駆的で野心的な挑戦者がそろったようだ。
ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
ペッパー本体自体は何でもできるロボットではありませんが、そんなペッパーをうまく生かすアプリの数々に驚きました。12月2日より5日まで開催される「2015国際ロボット展」でもペッパーが出展されます。

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