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東レが中国で浄水器事業を拡大する事情

東レが中国で浄水器事業を拡大する事情

中国の建材市場内にある東レの店舗(東レ提供)

東レが中国で家庭用浄水器事業に力を入れている。9月にも中国で展開する「家まるごと浄水システム」をフルラインアップで提供するほか、浄水器の自社販売店を現在の4店舗から3年後には10店舗に拡大する。経済発展著しい中国で、特に富裕層で浄水を求める需要が今後も増えると見込まれる。製品の拡充や店舗拡大で、中国市場をつかむ。(村上授)

【海外比率アップ】

東レの家庭用浄水器の売上高は非公表だが、同製品を含む環境・エンジニアリング事業の2019年度の売上高は1908億円。うち半数以上が家庭用浄水器で占めるとみられる。同事業で22年度に売上高を19年度比2割増の2300億円を目指している。

家庭用浄水器に占める日本と海外の売上比率は7対3で日本が高い。海外は欧州や東南アジア諸国連合(ASEAN)で販売するが、主力は中国。今後6―7年後には国内と海外の比率を5対5と、海外比率を高める考えだ。

【フルライン実現】

東レは約10年前から中国で一般家庭向けに浄水器の販売を開始した。中国では上水道の整備が進み、飲料用をはじめ洗濯やシャワーなど家庭で使う水を浄水にしたい需要が富裕層にある。東レは家を通る水道管の要所に複数の浄水器を取り付け、原水を浄水に変える「家まるごと浄水システム」を16年から販売。上水道から来た原水の微細なゴミを取り除く前置き浄水器、硬水を軟水に変える中央軟水器、飲用で使用する末端浄水器を提供してきた。9月にも水の塩素を取り除く中央浄水器を追加し、4つの浄水器で構成する同システムのフルラインアップを実現する。これにより、家の中で風呂や洗濯などに浄水を使うことができる。取り付け費用を除いたシステム一式の価格は日本円で約25万円。佐々木直美トレビーノ販売部長は「フルラインアップになったことで販売に勢いがつく」と期待する。

製品の拡充以外に販売網も構築する。中国の住宅はコンクリートむき出しのところから、施主自ら壁紙やドアといった内装を選んで取り付けるのが一般的だ。その住宅用建材が集まる巨大なショッピングセンター(建材市場)が都市部にあり、東レは建材市場への出店を増やす。

トレビーノ事業部の青柳圭介主席部員は「昔は小型浄水器しかなかったため、出店するだけの商材がなかった。最近は増えて富裕層などターゲットを絞って展開できるようになった」と振り返る。

【知名度高める】

約2年前から出店し始め、6月には4店舗目がオープン。現在は上海といった南部の沿岸部が中心だが、今後は北京をはじめ北部にも進出して出店を拡大する。これにより、中国での知名度を高めながら販売を拡大していく構えだ。

日刊工業新聞2021年7月2日

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