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ドコモが無線アクセスネットワークの海外展開へ一手。公開した「5GオープンRAN」白書とは?

ドコモが無線アクセスネットワークの海外展開へ一手。公開した「5GオープンRAN」白書とは?

5Gの高度化や国際展開が課題になっている(既存の可搬型5G基地局=NTTドコモ提供)

NTTドコモが無線アクセスネットワーク(RAN)の海外展開に向けた社外との協業を着実に進めている。28日、第5世代通信(5G)の高度化などを目指す「5GオープンRANエコシステム(OREC)」に関する白書を公開。柔軟で拡張性が高いとされる仮想化基地局(vRAN)について、今後1年以内に性能を3倍以上とする目標を示した。一方、多様な機器を使うことに伴う課題も指摘されており、解決に向けたドコモの指導力が問われる。(編集委員・斎藤弘和)

「(通信インフラの)オープン化によって、通信事業者が任意のベンダーの製品を選択でき、コスト面でもメリットがある」―。白書の一節だ。

基地局などの通信インフラでは、中国・華為技術(ファーウェイ)やフィンランドのノキアといった海外企業数社の存在感が大きい。これらのメーカーは、自社の機器一式で通信事業者を囲い込む“垂直統合”の事業モデルを展開してきた。

この潮流を受け、ドコモは競争が停滞して技術革新が進まなくなったり、調達リスクが高まったりする可能性を懸念。2月に富士通やNECなどの12社とORECの構築に合意した。従来、世界の通信設備市場でシェアが低かったメーカーにとっては商機拡大が期待でき、利害が一致した格好とも言える。

白書ではvRANの目標性能が明確に示された。現状のvRANと比べ、基地局1基当たりのカバーエリアや、基地局・端末間の通信の処理速度をいずれも3倍以上にするという。「ORECパートナーからの情報に基づくと、これらの値は1年以内に達成可能なはずだ」としており、協業が進みつつあることをうかがわせた。

他方、課題も白書に挙げられている。多様なメーカーが通信設備市場に参入すると、通信事業者は「製品を適切に組み合わせて、必要な性能が発揮できることを確認する必要がある」。NTTで技術戦略を担う渋谷直樹副社長も以前から、オープン化について「セキュリティーも含めた品質保証の活動をどこまで効率的にやれるかは、かなりのチャレンジだ」と認めていた。

こうした問題の解決に向け、ドコモは日本で今夏にORECの検証環境を構築する計画だ。「ドコモは5Gより前から、商用サービスをマルチベンダーで実現してきた。性能評価試験のノウハウも蓄積されている」(白書)との実績は、今後のORECの活動にも生きるのか。5Gの世界展開で出遅れた日本勢の将来を占う上でも進展が注目される。

日刊工業新聞2021年6月29日

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