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パイロット不足を乗り越えろ!求められるパイロット養成の多様化

育成機関増設も、定員割れの理由は…
パイロット不足を乗り越えろ!求められるパイロット養成の多様化

航空操縦学専攻では全学生が米ノースダコタ大学に留学する


増設したのに定員割れ


 東海大学工学部航空宇宙学科航空操縦学専攻の柴田啓二教授は、「定員は50人だが、設立以来、満たしたことはない」と話す。欠員は航空操縦学専攻の喫緊の課題だ。パイロットは人気の職業。航空操縦学専攻も毎年120人以上の応募があり、平均の倍率は約3倍だ。しかし、パイロットに求められる学力や資質などを勘案してふるいに掛けると、結果的に定員に満たない状態が続いている。

経済的な壁


 欠員の最も大きな要因は高額な学費だ。航空操縦学専攻は約1年半の米国留学も含め、4年間の学費が1600万円ほどかかる。柴田教授は「どうしても、4年間の学費を出せる家庭は限られてしまう」と話す。

 パイロット養成の費用は、国土交通省が2013年12月に設置した「乗員政策等検討合同小委員会」でも議論となった。大手航空会社では、日本航空が15年から奨学金制度を創設したが、独自の取り組みに留まっており、抜本的解決策は見いだせてない。柴田教授は「経済的な問題がクリアになれば、すそ野が広がる」と、支援策の拡充を求める。

 東海大学の航空操縦学専攻創立以降、法政大学、桜美林大学、崇城大学など、パイロットの養成学科を新設する大学が相次ぎ、現在、私立の四年制大学でパイロット養成学科を置く大学は5校ある。

 ANAは15年度から法政、桜美林、崇城からも、パイロットの採用を開始した。また、航空大学校に現役の機長を派遣する取り組みも始めた。こうした養成機関への支援は、社会問題となっているパイロット不足への危機感の表れとも言える。

内容を充実


 創立から10年を迎えた東海大学の航空操縦学専攻では現在、さらなるカリキュラム充実のため、17年にも新科目の導入を検討している。旅客機オペレーションの入門的な科目や、航空操縦におけるメンタル育成の科目など、パイロットとして就職後、乗務に役立つ、より実践的な授業を増やす予定だ。

 カリキュラムの拡充に合わせ、教員も増員したい考えだ。航空操縦学専攻の卒業生は、210人。16年にも卒業生初の機長が誕生する見通しだ。東海大学では今後、パイロット養成のパイオニアとして、即戦力となり得る人材の輩出を目指す。
日刊工業新聞2015年11月25日、26日生活面
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
多額の学費を負担してパイロットになっても、副操縦士、機長となるまで、トータルで見ればパイロット養成のコストはかかり続けます。これまでは受益者負担という考え方の中で、そのほとんどを航空会社が負担してきましたが、世界的な航空需要の拡大で、その負担をどのように配分するのかという問題を無視できなくなりつつあります。

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