超高層の「グリーンインフラ」。東京ポートシティ竹芝のここがスゴい!
自然が持つ多様な機能を社会基盤に活用する「グリーンインフラ」が、都市部でも注目されている。複合施設「東京ポートシティ竹芝」(東京都港区)は、建物自体がグリーンインフラとなっており、夏場に多発する豪雨や都市型洪水の対策など都市部に不可欠な機能を備える。さらに生物多様性の向上や地球温暖化にも貢献しており、都市部のグリーンインフラとして期待がかかる。(編集委員・松木喬)
東京ポートシティ竹芝は東急不動産と鹿島が設立した開発事業会社が建設し、2020年9月に開業した地上40階建ての高層ビル。海に近く、緑地が広がる二つの庭園の間に位置する。だが、開発前は道路やビル群に遮られ、豊かな自然の存在に気づきにくくかった。開発責任者だった東急不動産都市事業ユニット事業戦略部の仲神志保統括部長は、「緑のネットワークが分断されていた」と表現する。
東京ポートシティ竹芝の低層部は“緑の丘”のよう見える。2―6階のテラスに植えられた木々が葉を茂らせているためだ。横から見るとテラスは「大きな階段」(仲神部長)となっており、下層階ほど植物が増える。緑地は1700平方メートルあり、庭園に生息する鳥やチョウの飛来が確認され、緑のネットワークに組み込まれた。
生物多様性への貢献だけが緑地の機能ではない。テラスに盛られた土と植物の根によって600立方メートルの雨水を貯えることができる。地下にも800立方メートルの水槽があり、ビル全体で1400立方メートル貯水できる計算だ。この量は、法制度で要求される規模の2倍という。
近年、都市部では集中豪雨による洪水が多発している。雨水が一気に下水道へ流れ、処理しきれずに道路にあふれるためだ。東京ポートシティ竹芝はテラスで雨水を一時的にため、下水道への雨水の流入を遅らせることで洪水の発生を抑える。自然の機能を生かした防災であり、建物自体がグリーンインフラとなっている。
他にも自然を生かした機能がある。植物の木陰や蒸発する水が涼しさをもたらすクールスポット効果があり、都市部の気温が異常上昇するヒートアイランド現象を和らげる。また緑が身近にあることで、入居企業の従業員のストレス軽減も期待できる。
土を盛ると構造を強固にする必要があり、建設費用の増加要因になるが、「とにかく緑地空間をつくることにこだわった」(同)。視覚的に緑が多いと分かるため、環境保全の姿勢が社会に伝わる。持続可能な開発目標(SDGs)を意識する入居企業から好評といい、ビジネスにもつながっている。
国土交通省はグリーンインフラの啓発に力を入れ、事例を掲載したウェブサイトを運営する。また20年度には「グリーンインフラ大賞」を創設し、海岸林の復活や地域振興など各地の実情に合った活動を表彰した。都市部でも自然の機能の活用に知恵を絞ると、防災やビジネスで付加価値を生み出せる。