三菱商事・丸紅が物流DX!サプライチェーンの課題解決に布石
三菱商事、食品向け来月始動 丸紅、小売りに「計画+配送」
総合商社がサプライチェーン(供給網)のデジタル変革(DX)を加速させている。販売量や流通経路などのデータを人工知能(AI)で分析し、在庫削減や輸送効率化に取り組んでいる。三菱商事が出資会社を通じ食品流通分野などで在庫の最適化に乗り出すほか、丸紅はサプライチェーンの管理サービスを小売りなどを対象に販売している。(森下晃行)
三菱商事とNTTの共同出資会社のインダストリー・ワン(東京都千代田区)が7月から営業を始める。同社はメーカーや小売りなどが保有するデータと気象予測情報などのデータを接続し、在庫管理や需要予測を可能にするシステムを活用。まずは三菱食品が運営する物流センターを対象に、食品流通分野で在庫の最適化を進める。
三菱商事が三菱商事子会社のエムシーデジタル(同)、三菱食品と共同開発したAIを使い2020年度に実施した実証実験では、物流センターの在庫を最大4割削減しつつ欠品率の低下も達成した。三菱商事の垣内威彦社長は「メーカーから流通、小売りまでのプロセスで受発注や倉庫管理などにデジタル技術を導入する」としており、将来的には産業素材などの分野での展開も目指す。
三菱商事が自社グループのサプライチェーン向けにDXを推進しているのに対し、丸紅は日用品などの小売り業界を対象に、デジタルデータを活用したサプライチェーン全体の管理サービスを販売している。販売量や流通経路などのデータを可視化・共有し、AIで分析。最適な発注量やタイミングの計画を立てられるよう支援している。
計画策定はコンサルティング企業やシステム構築(SI)企業でも可能だが、丸紅の場合は子会社の丸紅ロジスティクス(同)が実際の輸配送業務を手がけており「計画の実行も請け負えることが強み」とする。
「サプライチェーンはデジタル化と縁遠い世界だった」(丸紅物流企画営業部デジタルSCM推進課)と言われるくらい、メーカーや卸、小売りなどの事業者ごとに情報が分断され、共有されてこなかった。個々の事業者がメールや電話でやりとりしていて全体が見えないため、発注や在庫管理などの業務が非効率だったという。
サプライチェーンのDXは物流業界の人手不足の解消にもつながる。矢野経済研究所の調査によると、3PL(サードパーティーロジスティクス)などを含む物流業界の市場規模は19年時点で20兆4050億円。22年には21兆5760億円に達する見通しだ。市場拡大が続く一方、ドライバーなどの労働者は今も足りていない。需要を予測し、商品を最適なタイミングで輸送できれば少ないドライバーでも効率的に運ぶことができる。