国内初の「レベル3」飛行!ドローンが東京湾縦断に成功した意義
大都市間「レベル3」国内初
先端ロボティクス財団(東京都中央区、野波健蔵理事長)と千葉市、横浜市は、飛行ロボット(ドローン)で東京湾を縦断する長距離飛行の実証実験に成功した。飛行距離は約50キロメートル、無人地域を目視外飛行する「レベル3」で行った。大都市間のドローンによるレベル3飛行は国内初という。
横浜市金沢区幸浦を8時40分に離陸。逆風の中を約1時間25分かけて千葉市美浜区の稲毛海浜公園に着陸した。歯科技工物の搬送にも成功した。
使用した機体はカイト(たこ)状の翼を搭載したカイトプレーン。故障してもカイトが抵抗力となり、急降下しないのが特徴だ。ドローンの頭脳に当たるフライトコントローラーは国産製で、簡単な手続きで使用できる351メガヘルツ帯のデジタル簡易無線局を採用。
今後、飛行速度を現在の時速50キロ―60キロメートルから同150キロメートルに引き上げるとともに、垂直に離着陸できる新型機を開発する計画だ。また、現在はガソリンエンジンを搭載しているが、大都市上空の飛行を想定し、電動化して静音性と環境への配慮を両立する。
インタビュー/先端ロボティクス財団理事長・野波健蔵氏 “空の道”で渋滞回避
野波理事長との一問一答は次の通り。
―東京湾縦断飛行に成功した意義は。「羽田空港を離着陸する飛行機が飛び交い、多くの船舶が停泊する東京湾上空に渋滞がない“空の道”ができた。渋滞を回避できることは、二酸化炭素(CO2)排出を抑制できるエコシステムであることも意味する。このようなインフラの構築に、ドローン以外には投資も必要ないというメリットも大きい」
―DSデンタルスタジオ(千葉市美浜区)が製造した歯科技工物を搬送しました。「容器を含めて重さが50―60グラム、価格が20万円程度のジルコニア製差し歯を搬送した。軽量で緊急性が必要で高価な搬送物はドローン物流と相性が良い。2023年に歯科技工物や関連する薬品からドローン物流を事業化する」
―災害時の活用も期待されます。「首都直下型地震を想定すると災害時には陸路は寸断され、地上交通はまひするだろう。その際にはドローンの出番で、救援物資搬送や被災地調査に活用できる。そのためには平常時からドローンによる物流ハイウエーを稼働し、迅速に対応できるよう準備する必要がある」(千葉・八家宏太)