「沖縄海洋ロボコン」リポート〈後編〉AUV部門に見た自信
11月21、22日に那覇市の海で開催
沖縄能開大の機体は、先輩の設計を参考に透明のアクリル製筐体(きょうたい)を採用したものの、カメラを二つに増やしてステレオビジョン化。一方でスラスターは前年の四つから二つに減らし、角度可変式で潜行と航行の二役をこなすなど新設計だ。
スタート直後からあっという間に潜行し、姿は見えなくなった。本部や客席から位置を確認できないため、ダイバーがロボットに合わせて泳ぐことに。順調にジグザク走行し、方向転換の得点や通過点を稼いでいく。
そして併走するダイバーはついにゴールへ到達。会場は一瞬盛り上がるも、機体は浮き上がってこず、ゴールを過ぎたまま砂浜の方に直進を続ける。このまま進むと座礁する恐れもある。心配する会場をよそに、スタート地点で見守っていたチームメンバーは自信たっぷりだった。「このあとゴールまで戻ってきて浮きます!」。
その言葉通り、機体は方向を変えてゴール地点へ再び向かい始める。会場全体が固唾(かたず)を飲んで見守るなか、プカリとロボットが浮いた。その瞬間、会場は歓喜に沸き、メンバーらはハイタッチで喜びを分かち合った。沖縄の言葉でいたずらっ子を意味する「やなわらばー号」は、凱旋(がいせん)航行まで成し遂げて、最優秀賞に輝いた。
「経験がアイデアを生む」
AUV部門に先立って行われたフリースタイル部門には、ジュニアテッククラブ玉城(たまぐすく)チームが「ウミガメロボ」でエントリー。今回唯一の小学生による参加だ。形状は小ぶりのウミガメそのもので、波にたゆたう様子も本物そっくりだった。
ただ、波が強かったことが影響し、パワーが波に負けてしまい、自由に泳ぎ回る姿が見られなかったのは残念だった。だが手足はきちんと駆動しており、これからの“成長”が楽しみなウミガメの登場となった。
表彰式で入賞者らは喜びを語る一方、「本来の力が発揮できなかった。戻ってきて優勝したい」と雪辱を誓ったほか、「海での操作は初めてだった。いい経験になった」と手応えを感じていた。
審査委員の山本郁夫長崎大学大学院教授は講評で「うまくいったところは磨きをかけて、うまくいかなかったところは要因分析をして対策してほしい。海は水槽と違って難しい。それを乗り越えて、海のもの(機器)はできている。若い世代の参加は喜ばしい。未来の技術者に向けてがんばってほしい」とエールを送った。山本教授は三菱重工業や海洋研究開発機構(JAMSTEC)で無人探査機の開発実績もある。苦戦したチームが多かったが、と尋ねると「まず経験しないと新しいアイデアは出てこない」と“海の先輩”はコメントした。
また、大会実行委員長の岡田正之沖縄能開大教授は「大会は成功といえる結果だ。全体的レベルは上がっている。続けていくことで海洋ロボのレベルも上がっていく。次回以降は台湾や近隣の国々からも参加してもらいたい」と来年への意気込みを語った。
【ROV部門】
・最優秀賞 沖縄職業能力開発大学校「ちゃんぷる~号」
・優秀賞 長崎大学・日本文理大学「高機動ROV」
・敢闘賞 岩手大学「FAN」
・特別賞 大里中学校「LEQUION-AQUA」
【AUV部門】
・最優秀賞 沖縄職業能力開発大学校「やなわらばー号」
【フリースタイル部門】
・特別賞 JTC玉城「ウミガメロボ」>
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