「市場で存在感を示したい」。ROE12%を目指す日清紡の本気度
ROIC、エレ事業に資源集中
日清紡ホールディングス(HD)は2025年12月期に株主資本利益率(ROE)12%という長期目標を立てている。M&A(合併・買収)で傘下に入れた無線事業会社やブレーキ用摩擦材メーカーなどの多様な業態を束ねる上で適していると判断した重要業績評価指標(KPI)がROEだった。
ただ、「(市場で)存在感を示したい」(塚谷修示取締役執行役員経営戦略センター財経・情報室長)と強気の目標数値を示しつつも、20年度のROE実績は5・8%と達成にはまだ遠い。自社株買いでROE改善を図る可能性に関しては中長期では否定しないものの、コロナ禍による先行き不透明感に備えて当面は手元資金を内部留保として確保することを優先する。
ROEと並行して指標としているのが投下資本利益率(ROIC)で、適正水準を8%とする。近年同社は「モノからコト、サービス」の方針を掲げ、利益率の高いエレクトロニクス事業に経営資源を集中している。投資効率向上の意味合いでも合致するとしている。数年以内には事業部ごとのKPIを固める方針で、従業員により効率的に利益を出すことを意識付ける狙いだ。「絶対値よりも成長率やポテンシャルを重視」(同)した上で、事業ポートフォリオの組み替えを進める。
足元の業績は、不振だったブレーキ摩擦材を生産するルクセンブルク子会社が立て直ったほか、不動産事業における分譲、賃貸事業による大幅な増収増益で堅調に推移。現在は将来の成長投資に備え「営業キャッシュフロー(CF)の創出」に力を入れており、原価や価格設定の見直しを進めている。20年度の営業CFは約425億円と前年度と比べ増加。「21年度も最優先課題」(同)として取り組んでいく。
また、資金調達の見直しも検討している。銀行からの借り入れがほぼ100%だが、債券の発行など直接金融の比重を高めることで調達の自由度を上げ、次の成長に備える。