骨再生医療の足場に活用、大阪市大が多孔体に親水性を持たせることに成功
大阪市立大学大学院工学研究科の白藤立教授らの研究グループは大気圧プラズマジェットを使い、数秒から数分の短時間で絶縁体の多孔体に親水性を持たせることに成功した。プラズマを伝搬するためのヘリウムガスを多孔体内部に浸透させることで、材料の奥まで高速に親水化処理ができる。ポリ乳酸などの樹脂で作る骨再生医療の足場や、高分子で作った微細反応装置のマイクロリアクターなどに活用が期待される。
プラズマの弾丸を多孔体にぶつけ、プラズマが穴の内部を伝搬して全体を高速で親水化する。従来の大気圧プラズマジェットの表面付近しか高速処理できない課題を解消した。プラズマの弾丸射出と材料へのヘリウム充満を同じプラズマジェットで担っていたため、奥まで届かなかったことを突き止めた。
放電現象であるプラズマは純度99%以上のヘリウムガスが存在さえすれば伝搬する。そこで材料を入れたガラス容器にヘリウムを充満し、別途ヘリウムを充満した通路を作り、容器の底にプラズマ弾丸をぶつけることで奥まで親水化できた。絶縁物の骨組みで、穴がつながった連続多孔体なら対応できる。
今後はヘリウムより安価なアルゴンガスでも適用できるか検討を進める。装置メーカーやユーザー企業との連携で実用化を目指す。
多孔質体の親水化に向けては簡便な水酸化ナトリウム水溶液への浸漬は親水化と洗浄に時間がかかるほか、減圧処理では高価な真空装置が必要となるのが課題だった。
日刊工業新聞2021年6月9日