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鉄鋼業界が温室効果ガス排出「実質ゼロ」へ技術開発ロードマップ、中国と競争激化

鉄鋼業界が温室効果ガス排出「実質ゼロ」へ技術開発ロードマップ、中国と競争激化

日本製鉄が主導するCOURSE50の試験高炉(千葉県君津市)

日本鉄鋼連盟は2050年の温室効果ガス排出の実質ゼロに向け、技術開発のロードマップ(行程表)を策定する。水素還元製鉄や鉄スクラップの品質確保、CCUS(CO2回収・利用・貯留)など複数の技術について、官民の機能分担や着手・開発・実用化の目標時期を設ける。鉄鋼業界の二酸化炭素(CO2)排出は国内全産業の約4割を占め、中国勢などとの競争激化も必至。さまざまな技術を掛け合わせる“総力戦”で臨む考えだ。(編集委員・山中久仁昭)

鉄連が策定する脱炭素技術の開発ロードマップは、業界共通の課題やそれを解決する技術を抽出。技術項目ごとに、30年、50年などの段階で目指す姿を示す。脱炭素は各社の経営計画の柱になるテーマであり、可能な限り早期に策定する考え。

脱炭素について鉄連の橋本英二会長(日本製鉄社長)は、粗鋼生産首位の中国勢との競争を念頭に「開発力がコスト競争力を決める大きなチャンスが来た。積極的に挑戦していく」と意欲を示す。

鉄連は50年に脱炭素を目指す基本方針を2月に公表。従来2100年を目標にしていたが、国の宣言に賛同し、50年前倒しした。存在しない技術の開発や設備の更新・導入に巨額の資金が必要になるなど「極めてハードルが高い」のが実情だ。

鉄鋼業界は粗鋼生産で石炭の恩恵を享受してきたが、日鉄やJFEスチールなど大手3社の上流工程がCO2の主な発生源。石炭由来のコークスに代わり水素で還元する製鉄法や低品位の石炭と鉄鉱石を使う方法、大型化する電炉の高炉への転換など「選択肢を総動員し、脱炭素を複線的に進める」(鉄連)。

業界内では、高炉で一部水素還元を行う「COURSE50(コース50)」など、国家プロジェクトの拡充に対する期待が大きい。

電炉を使う企業では高止まりした電気料金の是正などが課題。中国勢の台頭もあり「スクラップの需給や価格構成が変わる中、電気の安定供給とコストを踏まえた電源構成を議論し、意見を出すべきだ」(橋本会長)という。

日刊工業新聞2021年4月5日

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