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原材料価格が上昇、値上げに動く素材メーカーも

原材料価格の上昇も企業収益の懸念材料となっている。世界的な景気回復の見通しや金融緩和策などを背景に商品相場は上昇基調にある。化学各社の22年3月期は、ナフサなどの価格上昇の影響が見込まれる。

東ソーはウレタン原料やカセイソーダなどを製造するクロル・アルカリ事業について、増収ながら利益横ばいを予想する。「販売数量は増加するが、ナフサやベンゼン、石炭などの値上がりで交易条件が悪化する」(東ソー担当者)。

鉄鋼業界は原料高に伴うコスト上昇を踏まえ、「鋼材価格へ確実かつ速やかに反映すべく努める」(柿木厚司JFEホールディングス社長)方針。日本製鉄も海外に比べて低水準だった鋼材価格を引き上げる構えだ。

中期的には、自助努力で改善を進める考えだ。日鉄の橋本英二社長は価格低迷の要因の一つとして「(鋼材生産の)余剰能力を抱えていた」と認識。このため、「25年度に向け(製鉄所・高炉の休止など)能力削減に取り組む」とした。

電炉メーカーの東京製鉄は、4月契約分以降の熱延鋼板の販売価格(建値)を月を追うごとに引き上げている。熱延鋼板は製造業で多く用いられる鋼板品種に該当。世界的に需要が高まっていて鉄不足な状態にあり、値段の引き上げを決めた。

非鉄分野では今月、銅の国際相場が約10年ぶりに最高値を更新した。ただ、住友金属鉱山の橋本直樹経営企画部企画管理担当部長は「中国の銅需要拡大だけでなく、投機資金の流入による一時的な要因が強い」と指摘。足元の状況が続くとはみておらず、21年度は足元に比べて低い価格に設定。「直近半年間の上げを今後1年かけて戻していくのでは」と予測する。

これに対し、昭和電線ホールディングスの長谷川隆代社長は「銅価に影響されない経営を目指してきた」と強調。受注と価格の均衡を取るといった策を講じ、「前期も収益にそれほど影響はなかった」と話す。

最終製品を手がけるメーカーからは「(半導体の)原材料も非常にタイトだ。需要は堅調に推移するものの、どんどん作れるという状況にはない」(柴田英利ルネサスエレクトロニクス社長)、「影響を受ける材料については、価格上昇時には顧客と半分ずつ持ち合うなど、あらゆる形の契約を顧客と結んでいる」(永守重信日本電産会長)といった声が聞かれる。

日刊工業新聞2021年5月24日の記事から抜粋

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