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近藤那央のロボット解体新書! 力覚センサメーカー ワコーテック(後編)

センサは、普段は見えないところで世界を変えている!
近藤那央のロボット解体新書! 力覚センサメーカー ワコーテック(後編)

世界最小の力覚センサは指先ほどの小ささ


リスクのある研究に挑戦しつづける


岡田社長「加速度センサもそうですが、ワコーでは世界初のセンサをいくつか開発してきました。30年前にそういったものに着目して開発をはじめるというのは、かなりリスクのある挑戦でした。当時は見向きもされませんでした」
近藤「今では一般的に使われているセンサばかりですね。社員数は何名でやられているのですか?」
岡田社長「ワコーとワコーテック合わせて、全部で10数名です。
また先ほど特許の話をしましたが、もう一つ自慢なのが特許登録率。普通の企業は平均50%程度ですが、当社は90%以上です。アメリカとヨーロッパでは、100件以上登録され、1件も落としていません。」
近藤「誰もやっていないことに着手し続けているんですね」
岡田社長「地道に誰もやっていないことを、信念を持って続けていくことが大切ですね」

近藤「会社に所属し、ずっと研究だけをする研究者の方も多いと思います。研究の道を進まず、起業したのはなぜですか」
岡田社長「家族の為です。丁度、長女が生まれたからです。『これは遊んでちゃいかん』と」
近藤「おおー」

人と暮らすロボットにセンサは不可欠


近藤「私が今ペンギン型の水中ロボットを開発していて、水中で人間と一緒に泳げることを目標にしています。人間や障害物とぶつかったことを検知できるようにしたいので、力覚センサが役立ちそうだなと思いました」
岡田社長「人と暮らすロボットには力覚センサが不可欠ですし、そのためにより優れたセンサが求められています。生活支援ロボットはこれから一家に一台の時代が来ると思っています」
近藤「私もそう思います」
岡田社長「各家庭に普及するためには軽自動車と同じく100万円くらいの価格である必要があると思います。普及のためには安全性が最も重要です。そのために必要なセンサを作ろうと考えています」
近藤「高校の時にサービスロボットの安全性について興味がありました。安全性をクリアすることで、普及につながるのだなと思いました」
岡田社長「最近法律の解釈が変わり、出力80ワット以下であればロボットを安全柵で囲わなくてもよくなりました。80ワットってそこそこ力が出せるので、かなり重いものも動かせるようになります。期待しているのですが、生活支援ロボットが普及するのにはまだまだ時間時間が掛かりますね」
近藤「サービスロボットには『このロボットが絶対人間を攻撃しない』という信頼性が大事だなと思います」

※3 分解能 測定機器が判別できる最小の差。

<近藤那央のひとこと>
 今まで、産業用ロボットには一般に力センサがついているものだと思っていたのですが、それは違い、私が前回のロボット展で見たような力を感じて微妙に修正しながら作業することができるロボットはワコーテックさんのような要素技術メーカーがあったからだと知り大変びっくりしました。ダイレクトティーチングに関しても、この技術については知っていたのですが、ワコーテックさんありきの技術だったとは思いませんでした。このセンサは世界中様々な会社の産業用ロボットに導入されていると知り、こういった部品メーカーは縁の下の力持ちの存在ではありますが、世界を一気に変える力があると感じました。
 また、岡田社長のお話から、自分の技術が世界を変えて今の生活を支えている、まだまだ変えてゆくという力を感じ、非常にかっこ良くて、自分もいつか胸を張って世界を変えたと言えるようになりたいと思いました。今回は本当にありがとうございました。今年のロボット展では、アームの先の赤いセンサを注意して探してみることにします。
ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
現在は一般的になっているセンサも、何十年も前から岡田社長が研究してきた成果だと知り驚きました。「まだまだこれからも、新しい、世界をびっくりさせるようなセンサを開発していく」と話すいきいきとした姿が印象的でした。

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