Wi-Fi電波で発電できる!東北大などが素子を開発
東北大学の深見俊輔教授と大野英男教授(総長)、シンガポール国立大学のヒュンスー・ヤン教授らは、無線LANのWi―Fi(ワイファイ)で用いられる2・4ギガヘルツ(ギガは10億)帯の電波で発電する素子を開発した。8個の発電素子を直列につなぎ、発光ダイオード(LED)を点灯させることに成功。この発電素子を磁気抵抗メモリー(MRAM)のように並べると、Wi―Fiとして飛び交う通信用電波で発電できると期待される。
コバルト鉄ボロンで絶縁体の酸化マグネシウムを挟んで磁気トンネル接合素子を作製した。この素子に2・4ギガヘルツの強力な電波を当てるとコバルト鉄ボロンの磁化が共鳴して、すりこぎ運動のように回転する。これで直流電流が流れる。
効率よく電波を捉えるためにコバルト鉄ボロンの磁化が斜めになる素子を開発した。素子の大きさは幅80ナノメートルで長さ200ナノメートル(ナノは10億分の1)。コバルト鉄ボロンなどの厚みを最適化した。
発電素子8個を直列につなぐと、1ミリワットの交流電力から20・2ボルトの電圧が得られる。エネルギーの変換効率は1割程度で、現行技術を上回った。
磁気トンネル接合素子はMRAMとして量産技術が確立されている。今回は研究室で強力な電波を当てて発電原理を確かめたが、素子を大量に並べれば通信用に飛び交う電波から電力を回収できると期待される。IoT(モノのインターネット)などの電源になる。今後は数百、数千単位で素子を並べる効果を研究する。
成果は英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。
日刊工業新聞2021年5月19日