「民泊」リスクとチャンスの“収支”を探る
政府が有識者会議を発足。先行市場の事例から見えてくること
田村明比古観光庁長官は18日、観光客にマンションの空き室などを有料で貸し出す「民泊」の有識者会議を、11月中にも立ち上げる方針を明らかにした。厚生労働省と合同で、宿泊施設の衛生問題や、治安や防火などの安全性、近隣住民とのトラブル防止、ホテルや旅館との公正な競争環境の整備など、民泊をめぐるさまざまな課題を議論する。2015年度中に各テーマについて施策の方向性を示し、16年中に結論を出す見通し。
議論には、消防庁や警視庁などの関係省庁や、国土交通省の住宅局なども参加する。田村長官は「法改正などの細かい制度設計は15年度内では難しいが、方向性はまとめたい」と述べた。有識者会議で出した結論は、政府が9日に立ち上げた「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」の議論に反映する。
以前、Airbnbで収入を得たい人に代わって業務を行うサイト「Guesty」をご紹介した。こうした短期レンタル物件の管理・運用を行い、ホストの手間を掛けることなく収入をもたらすサービスは「プロパティ・マネジメント」と呼ばれ、多くの企業が参入しており、その規模は690億ドル(約8兆円)にものぼるという。
そうした背景もあって、各プロパティ・マネジメント・サービスはただホストに代わってAirbnbにまつわる業務を行うのみでなく、独自の価値を提示する段階に入りつつあるようだ。今回はそうしたサイトの中から「ゲストとホストの双方がより快適に使えること」と「安定した収入」という価値を提示したサービス、「Pillow」をご紹介しよう。
https://www.pillowhomes.com/
Pillowは2014年1月にサンフランシスコにて創業。同州ベイエリアの他、ロサンゼルスの一部でもサービスを提供している。これまでに270万ドル(約3億2000万円)の資金獲得に成功しており、ピークシーズンには250以上の予約を扱った実績を持っている。
Pillowの創業者はSean Conway(以下コンウェイ)氏。同サイトを手掛ける前から「Notehall.com」などの創業に携わってきた人物だ。
サイト創設のきっかけは、最初に起業した会社を売却し、CEOを退職したときだった。大の旅行好きだったコンウェイ氏は、余暇を利用し、50カ国をめぐるバックパック旅行に出ることを計画する。一方で「当時、お金を稼ぎたいモードに入っていた」という同氏は、Airbnbを利用して自分の家を貸し出し、旅行している間も最大限の利益を得ることを目論んでいた。
もちろん、外国に行っている間は自分で家の管理やゲストの対応などを行うことはできない。そこで同氏はルームメイトやいつも利用しているハウスクリーナーに後を託すことにした。
ところがコンウェイ氏の目論見は大きく外れることになる。きちんと管理を行っていないために情報の混乱が生じ、あるゲストは誰とも連絡が取れないままに利用できない状態となり、別のゲストは汚いアパートにチェックインしてしまった。結局休暇の半分ほどしたところでコンウェイ氏はAirbnbの利用を断念。当初入ると計算していた収入9000ドルをみすみす逃してしまったのだ。
コンウェイ氏はこの体験から、Airbnbをはじめとした短期間のレンタルスペースやホームシェアリングサービスは家を使って収益を得る上では素晴らしいサービスだが、まだ改良の余地はある、と考えた。特に彼が不満に感じたのは、長期間旅行したりするなどして家から離れたホストは、人に貸して収益化することができない点だった。またホストには管理能力やゲストとの対応など、一定のスキルも必要となる。
「多忙な人は、自らホストとなって、清掃や管理、個人事業主として運用するのはリスクだと考えているかも知れない、と思ったんだ」(コンウェイ氏)
ならば家を貸し出したい所有者に代わって業務を代行するコンシェルジュ型サービスをつくり、鍵の受け渡しから、掃除や足りないものの補填、収益の管理、緊急事態の対応まで必要な管理・運用をすべて行ってみてはどうか、と考えついた。
代行サービスを行うには、誰がどのようにして業務を受け持つかという問題もあったが、資産を運用する専門家、客が到着するために最終的なチェックや補充をおこなうもてなしのプロ、クリーニングの担当者というように、専門のスタッフをそれぞれの分野に割り当てる形にすることにした。
こうして準備を整えていったコンウェイ氏は2014年1月より「Pillow」(当初のサイト名はAirenvy)を起ち上げ、サンフランシスコのベイエリアを中心にサービスを展開することとなったのである。
議論には、消防庁や警視庁などの関係省庁や、国土交通省の住宅局なども参加する。田村長官は「法改正などの細かい制度設計は15年度内では難しいが、方向性はまとめたい」と述べた。有識者会議で出した結論は、政府が9日に立ち上げた「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」の議論に反映する。
米国では「Airbnb」ビジネスが続々登場
文=尼口友厚(ネットコンシェルジェ CEO)
以前、Airbnbで収入を得たい人に代わって業務を行うサイト「Guesty」をご紹介した。こうした短期レンタル物件の管理・運用を行い、ホストの手間を掛けることなく収入をもたらすサービスは「プロパティ・マネジメント」と呼ばれ、多くの企業が参入しており、その規模は690億ドル(約8兆円)にものぼるという。
そうした背景もあって、各プロパティ・マネジメント・サービスはただホストに代わってAirbnbにまつわる業務を行うのみでなく、独自の価値を提示する段階に入りつつあるようだ。今回はそうしたサイトの中から「ゲストとホストの双方がより快適に使えること」と「安定した収入」という価値を提示したサービス、「Pillow」をご紹介しよう。
https://www.pillowhomes.com/
Pillowは2014年1月にサンフランシスコにて創業。同州ベイエリアの他、ロサンゼルスの一部でもサービスを提供している。これまでに270万ドル(約3億2000万円)の資金獲得に成功しており、ピークシーズンには250以上の予約を扱った実績を持っている。
自らホストとなることは、時間や手間の点で大きなリスクがある
Pillowの創業者はSean Conway(以下コンウェイ)氏。同サイトを手掛ける前から「Notehall.com」などの創業に携わってきた人物だ。
サイト創設のきっかけは、最初に起業した会社を売却し、CEOを退職したときだった。大の旅行好きだったコンウェイ氏は、余暇を利用し、50カ国をめぐるバックパック旅行に出ることを計画する。一方で「当時、お金を稼ぎたいモードに入っていた」という同氏は、Airbnbを利用して自分の家を貸し出し、旅行している間も最大限の利益を得ることを目論んでいた。
もちろん、外国に行っている間は自分で家の管理やゲストの対応などを行うことはできない。そこで同氏はルームメイトやいつも利用しているハウスクリーナーに後を託すことにした。
ところがコンウェイ氏の目論見は大きく外れることになる。きちんと管理を行っていないために情報の混乱が生じ、あるゲストは誰とも連絡が取れないままに利用できない状態となり、別のゲストは汚いアパートにチェックインしてしまった。結局休暇の半分ほどしたところでコンウェイ氏はAirbnbの利用を断念。当初入ると計算していた収入9000ドルをみすみす逃してしまったのだ。
コンウェイ氏はこの体験から、Airbnbをはじめとした短期間のレンタルスペースやホームシェアリングサービスは家を使って収益を得る上では素晴らしいサービスだが、まだ改良の余地はある、と考えた。特に彼が不満に感じたのは、長期間旅行したりするなどして家から離れたホストは、人に貸して収益化することができない点だった。またホストには管理能力やゲストとの対応など、一定のスキルも必要となる。
「多忙な人は、自らホストとなって、清掃や管理、個人事業主として運用するのはリスクだと考えているかも知れない、と思ったんだ」(コンウェイ氏)
ならば家を貸し出したい所有者に代わって業務を代行するコンシェルジュ型サービスをつくり、鍵の受け渡しから、掃除や足りないものの補填、収益の管理、緊急事態の対応まで必要な管理・運用をすべて行ってみてはどうか、と考えついた。
代行サービスを行うには、誰がどのようにして業務を受け持つかという問題もあったが、資産を運用する専門家、客が到着するために最終的なチェックや補充をおこなうもてなしのプロ、クリーニングの担当者というように、専門のスタッフをそれぞれの分野に割り当てる形にすることにした。
こうして準備を整えていったコンウェイ氏は2014年1月より「Pillow」(当初のサイト名はAirenvy)を起ち上げ、サンフランシスコのベイエリアを中心にサービスを展開することとなったのである。
日刊工業新聞2015年11月19日4面