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清酒の多様化につながる、100年前の清酒酵母を活用する新技術

清酒の多様化につながる、100年前の清酒酵母を活用する新技術

イメージ写真 広島6号の胞子形成細胞(広島県立総合技術研究所食品工業技術センターの発表資料から)

広島県立総合技術研究所食品工業技術センターは、酒類総合研究所と共同で清酒酵母の改良を促進する技術を開発した。100年前に分離した清酒酵母を活用し、これまで困難だった清酒酵母の改良を容易に行えるようにした。優れた清酒酵母を開発することで、清酒の多様化が図れるという。

現在、清酒製造現場で広く使われる日本醸造協会の酵母「きょうかい酵母」は優れた醸造特性がある半面、正常な胞子形成能力がない。このため育成や多様化に用いる「交雑」改良が難しいのがネックとなっている。

今回開発したのは、この胞子形成能力を回復し、交雑による改良を容易にする技術。約100年前に分離し、過去に清酒酵母として使用していた「広島6号酵母」を活用した。

広島6号酵母は、きょうかい酵母と近縁だが、正常な胞子形成能力を持つ。きょうかい酵母と交雑させることで、胞子形成能力のある酵母を得られることを発見した。これを使って醸造した酒は貯蔵中に劣化臭も発生しにくい。

劣化臭の成分であるジメチルトリスルフィド(DMTS)生成も低いという優れた特性がある。この特徴と胞子形成能力を生かして清酒酵母を改良することで、より多種多様な清酒の醸造に結びつくという。

日刊工業新聞2021年5月7日

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