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「手袋のまち」の資料館で最近起きたアピールポイントの変化

「手袋のまち」の資料館で最近起きたアピールポイントの変化

有名アスリートらが契約するメーカーの手袋がずらりと並ぶ

“手袋のまち”世界へ

香川県東かがわ市は、手袋産業が集積する「手袋のまち」だ。世界で活躍するプロなどに供給する有名アパレルメーカーの手袋の多くを、同市内の企業が生産している。「日本手袋工業組合」が同市で1962年に設立されて以降、手袋をはじめ多くの資料が集まってきた。そこで、同工業組合は東かがわ市の手袋産業を広く知ってもらおうと、2009年に「香川のてぶくろ資料館」を開設した。

同工業組合は大阪へ転じた東かがわ市内の寺の副住職が、1888年に手袋を作り始めたことを「香川の手袋生産の原点」と位置づける。この技術が後に、同地域へ持ち込まれ生産が活発化した。資料館に入ると、有名アスリートが契約しているメーカーの手袋がずらりと陳列されている。来館者の多くは、これらを市内の企業が作っていることに驚くという。

資料館は当初、さまざまな手袋や産業の歴史、かつての製造工具などを紹介するのが目的だった。だが、最近は世界の著名アスリートが使っている手袋が市内で生産されていることをアピールのポイントにしている。大原正志事務局長は、「相手先ブランド生産がほとんどで、契約上(手袋を使っている)選手名を打ち出すのが難しい。だからこそ、来館して知ってほしい」と、資料館の重要性を説明する。

有名メーカーの手袋のほとんどを東かがわ市内の会社が製造している

展示物は100点ほどになるが、まだ700点以上が倉庫に保管されている。スペースの都合で展示できていないが、それら資料の公開を目指し、資料館の増設も検討している。

新型コロナウイルスの感染が拡大する以前は、連日多くのインバウンド(訪日外国人)でにぎわっていたという。今は地元の学生が、社会科見学に利用しているという。

コロナ禍を背景に生活様式が変化し、手袋業界も影響を受けた。一方、手袋の「素手を覆う」という特徴が、感染症などの発生や流行の防止に効果があるのではとの評価につながり、需要が変わってきているという。そうした役割の手袋も、時代とともに生まれた製品として展示される日がくるかもしれない。

【メモ】▽開館時間=10―17時(受け付けは16時30分まで)▽休館日=11月23日と年末年始▽入館料=無料▽最寄り駅=JR高徳線「讃岐白鳥駅」▽住所=香川県東かがわ市湊1810の1▽電話番号=0879・25・3208(日本手袋工業組合)

日刊工業新聞2021年4月30日

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