高価格帯の化粧品に勢い!高まる「おうち美容」ニーズを狙え
コロナ禍で高価格帯の化粧品が勢いに乗っている。外出自粛による巣ごもりで自宅での“おうち美容”のニーズが高まった。メーカー各社が発表した2020年度の売上高実績によると、付加価値の高いヘアケア・スキンケア商品などが好調に推移した。各社は独自の価値を訴求するブランディングや新製品の投入を通じ、継続した需要の取り込みを狙う。(大阪・中野恵美子)
化粧品や美容家電を手がけるI―neは主力のライフスタイルブランド「ボタニスト」を刷新した。シャンプー、トリートメントの価格は1個1540円(消費税抜き)で一般的な商品に比べると高額とされる。リニューアル発売後、3月のボタニストの売上高は前年同月比95%増となった。髪の悩みに合わせて展開する5種類のうち、頭皮ケアタイプは同3倍以上に伸びた。
テーマに共感
ボトルには環境負担の低いバイオマスプラスチックを採用。また売り上げの一部を植林保全活動支援に充てている。「消費者の環境意識が高まり、サステナブルなテーマに対する共感を得られた」(同社)と分析する。
衛生商品伸びる
老化角質を取り除くことで肌を美しくする「ふきとり化粧水」で国内シェアトップ(2019年度現在)のナリス化粧品(大阪市福島区)も、高級ブランドが好調だ。21年3月までの1年間で、高機能美容液「セルグレース フォーミュラ」の売上高は前年比16%増となった。同美容液は容量30ミリリットルで消費税込み価格が1万6500円。角層細胞に働きかけ、ハリを与える。
高級ブランド以外にも、薬用ハンドソープなどの衛生商品、マスク着用による肌荒れを防ぐ化粧水、“コロナ太り”に対応する糖類ゼロの栄養調整食品などが伸長した。口紅やファンデーションは例年よりも低調だったが「(強みの)スキンケアは高額品がかつてない売り上げになった」(同社)とする。
口腔ケア業界にも同様の動きが見られる。歯磨き剤メーカーのスモカ歯磨(大阪市西淀川区)は自社ブランドの薬用歯磨き剤「コスミオン」が伸びた。コスミオンの21年3月期売上高は前期比3倍となった。歯科医院向けOEM(相手先ブランド)歯磨き剤のノウハウを応用して開発したブランドで、朝用は美白、夜用は抗菌と分けている。
高付加価値奏功
藤野和仁社長は「市場ニーズに合わせた高付加価値の歯磨き剤開発が奏功した」と手応えを得る。歯周病は糖尿病など全身疾患と関連しているとされる。歯周病や口臭予防に特化し、科学的根拠に基づいた口腔ケアの需要が一層高まると見る。