路面電車を守る「リバースエンジニアリング」。金属3Dプリンターで部品復元
路面電車の部品を復元―。双日子会社の日本積層造形(宮城県多賀城市)は、路面電車に使われる古い部品を金属3Dプリンターで再製造した。現存する製品から復元する「リバースエンジニアリング」のため設計図がなくても製造できる点をアピールし、同社は今後、路面電車やクラシックカーといった古い部品の再製造に取り組む。
「“1品モノ”を作るのにわざわざ金型をおこすのは現実的でない」と日本積層造形の小松伸弘営業部長は指摘する。同社は阪堺電気軌道(大阪市住吉区)の所有する1963年製路面電車の方向制御装置「逆転空気シリンダー」を金属3Dプリンターを用いて再製造した。
既存部品を3Dスキャナーで測定し、スキャンデータから作成した3Dデータに基づき復元した。元の部品は鋳鉄製だったが、チタン合金で再製造したため「40%以上軽量化し、さびにくくなった」(小松部長)という。
路面電車業界では古い車両が現役で使われているものの、設計図が紛失していることがある。特に戦前・戦中に製造された車両部品は残っている設計図が少なく、部品交換に苦労しているという。
リバースエンジニアリングはコスト面から大量生産には向かないが、少量多品種の部品を製造する場合に需要が期待できると日本積層造形はみる。
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日刊工業新聞2021年4月23日