防衛装備品が岐路に、住重が次期5.56mm機関銃の評価試験を辞退
住友重機械工業が陸上自衛隊の装備品である次期5・56ミリメートル機関銃の評価試験を、途中で辞退したことが明らかになった。防衛装備品分野ではコマツも軽装甲機動車開発・製造から撤退を表明している。最新ステルス戦闘機「F35」など米国製の高額な武器購入が増える一方で既存の武器は予算の制約から発注量の減少が続いており、生き残り環境は厳しい。量の少なさが国産武器の高額化を招く主要因になっている。コストの面から外国製を購入すべきか、国防や安全保障の見地から国産品を維持すべきか、岐路に立たされている。(編集委員・嶋田歩)
住重が辞退したのは防衛省が2020年度から評価試験を続けている5・56ミリメートル機関銃で「機関銃や機関砲全体の生産をやめる考えはない」(同社)。機関銃の生産は田無製造所(東京都西東京市)で、同製造所は他に極低温冷凍機を生産。半導体関連や磁気共鳴断層撮影装置(MRI)向けを中心に多忙という。
住重の売上高で防衛装備品関連の比率は1%程度。機関銃はさらにその数分の1と規模は小さい。住重の辞退により、5・56ミリメートル機関銃のメーカーはベルギーのFNハースタルか、独ヘッケラー&コッホ(H&K)のどちらかになる見通し。
国産機関銃の価格は、おおむね外国製の5倍近いとされる。注文数量の少なさに加え、口径により火器メーカーが乱立することがネックになっている。コロナ禍で日本企業の多くは事業の「選択と集中」を迫られており、住重のような企業がこの先、増えてもおかしくない。
防衛装備品関連では、音響測定艦など特殊艦艇に強い三井E&Sホールディングスも、三菱重工業に艦艇事業の売却を決めた。米国は軍用機製造で米ロッキード・マーチン、米ボーイングの2強への集約が進む。研究開発や技能維持にも多額の費用がかかる中で国内防衛産業をどう保護すべきか、早急に検討すべき問題だ。