三菱地所や東急も…不動産大手が挑むロボット活用の中身
コロナ禍により不動産業界でロボットや無人店舗の活用が進んでいる。三菱地所は本社(東京都千代田区)にカフェの飲み物を運ぶ配膳ロボットを本格導入した。日鉄興和不動産は自社開発のマンションにベンチャーと共同開発した無人店舗を設置した。従来、ロボットや無人店舗は労働力不足を補う点が売り物だったが、コロナ禍では“非接触”の点でも評価されている。(取材・大城麻木乃)
「人を介さないでモノを運べることもロボットの魅力」。三菱地所DX推進部の渋谷一太郎統括は配膳ロボットの良さをこう語る。
同社は2月中旬―3月上旬、NECネッツエスアイ(同文京区)が提供する自律走行型配送ロボット「ユンジデリ」を活用した実証実験を実施。本社3階のカフェテリアから同じ階の応接室へ飲み物を運ぶ配膳業務にロボットを使った。結果、1日当たり2―3時間、カフェテリアのスタッフ1人の作業を減らす効果を得た。
何よりも人が行き来して配膳するより「新型コロナの感染リスクを減らせる」(渋谷統括)とみて4月から本格導入した。今後は本社以外の自社ビルに入居する飲食店での利用のほか、将来的には屋外でも使い「スマートシティー構築に生かしたい」(同)という。
日鉄興和不動産は、ベンチャーの600(東京都千代田区、久保渓社長)と共同開発した無人店舗「ストア600」を自社開発の新築マンション10棟に設置した。ストア600は四角い棚に施錠した扉が付いており、扉と陳列された商品に付いたQRコードを携帯電話で読み取り解錠・決済する。店舗というよりも自動販売機に近い形状だ。
自販機の商品がボタンを押して落下した際に商品の中身が崩れないよう包装資材や中身に耐衝撃性などの工夫が必要なのに対し、ストア600は「何の加工もせずに商品をそのまま陳列できる」(久保渓社長)ことが強みだ。扱える商品の自由度が高いことから、「地方のスイーツを売るなど、マンションの立地ごとに陳列内容を変えたい」(日鉄興和不動産の猪狩甲隆常務執行役員)という。コロナ禍で無人販売のニーズは高いとみて年に20棟のペースで設置箇所を増やす。
東急不動産が20年9月に開業した大型複合施設「東京ポートシティ竹芝」(東京都港区)では、ソフトバンクなどが自動走行ロボットを活用した配送サービスの実証実験を9月まで推進中。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の技術開発事業の一つで、ロボットが施設内のエレベーターに乗降して異なる階へ荷物を運ぶ実験に取り組む。「非対面での配送といった利点が見込める」(ソフトバンク広報)と期待する。
森トラストのビルでもベンチャーのキュービットロボティクス(東京都中野区)が複数のロボットを組み合わせたビル内配送サービスの実証実験を4―6月に実施予定だ。新型コロナの第4波の懸念がある中、不動産業界でのロボット活用は一段と広がりそうだ。