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複数の有名化粧品のOEMメーカー、長引く「マスク生活」で倒産へ

コスメティック・アイーダ、10年前の震災は乗り越えたがコロナに勝てず

化粧品のOEM(相手先ブランド)生産メーカー、コスメティック・アイーダ(神奈川県大和市)は2月2日に自己破産を申請した。同社は1981年に創業。宮城県亘理郡に三つの生産拠点を設け、多品種の化粧品製造を手がけてきた。複数の著名な化粧品メーカーのOEM製造を主力事業とするほか、プロ仕様の業務用化粧品も幅広く愛用され、2004年3月期には年売上高約14億2900万円を計上していた。

その後も堅調な業績で推移していたが、11年3月に東日本大震災で主力工場が津波にのまれた。この工場は長らく操業停止に追い込まれるなど、甚大な被害を受けた。

被災から6年後に10億円超の補助金を活用し、工場をリニューアルして操業再開。同時に敷地面積2万平方メートルを超える宮城本工場を本格稼働させた。生産能力を大幅に増強して巻き返しを図ったが、損益面では営業損益段階から多額の赤字計上が続いた。

20年3月期に入ると、海外案件や新商品案件で受注を獲得するなど上半期は好調だった。しかし期末にかけて状況が一変。新型コロナウイルスの感染拡大で中国からの材料調達が止まり各案件の進捗(しんちょく)が一気に鈍化した。長引くマスク生活、外出自粛やインバウンド需要の消失もあり国内の化粧品需要が低迷。同社の売り上げも大幅に減少した。

この間、地元の中小企業再生支援協議会を利用して私的整理を試みたが、多額の税金の支払いが困難と判断し、今年2月に自主再建を断念した。多額の設備投資を行った同社にとって想定外だったのは、新型コロナの感染拡大に尽きる。

10年前の震災被害は乗り越えたが、コロナ禍を乗り切るだけの体力は残されていなかった。今回、会社は清算されるが既存事業はスポンサーへの譲渡が決まった。被災地・宮城の雇用を支えた生産拠点が、事業譲渡先の下で今後も存続される見込みとなったことがせめてもの救いだろう。

(文・帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2021年3月30日

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