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留守中の犬をケアしてくれる万能マシーン。巨大なペット市場を切り開くか

文=尼口友厚(ネットコンシェルジェ CEO)ボタンの3つついた白い機械「Clever Pet」

犬がゲームに正解すると自動的にご褒美が出てくる


 トラーチェー氏らがつくったマシーンは「Clever Pet」と名づけられ、KickStarterのプロジェクトで総額18万ドル(2160万円)以上の支援金を集めたことで、世に出ることになった。この機器の特長は、自動的に犬が遊べるような工夫がいくつも施されていることにある。

 中央のボウル部分は餌皿の役目も果たしており、犬にご褒美を与えるときには自動で開き、少なめの餌が出てくるという構造となっている。また、前面には3つのライトが点灯するボタンを配置。なお犬や猫がプラスチックの感触を嫌う傾向にあるため、耐久性があり、抵抗も少ないシリコンがボタンの素材に用いられているという。

 使用時には用意されたゲームの中から、希望するゲームを飼い主があらかじめ設定。飼い犬がそのゲームに正解すると自動的にご褒美として飼い犬に餌を与えることができる、というしくみだ。

 ゲームの種類は何通りもあり、学習度に応じて難易度を変更できるようになっている。一番簡単なゲームは3つあるボタンのうち1つが点灯したら、その点灯したボタンのみを押すと餌が登場する「光をタッチするゲーム」というものだ。

 これが「パターンゲーム」になるとより複雑になり、パッドがランダムに点灯するので、その順番通りにパッドをタッチすると合格。さらに「ワードゲーム」では「ブルーのボタンをタッチして」「右のボタンをタッチして」など、言葉で指示が出されるため、それぞれの単語の意味を犬がきちんと認識する必要がある。

 同サイトの説明によると、ゲームを通してより規律ある行動を学ぶことができる効果もあるということだ。確かにワードゲームは飼い主が餌を与えるときの「しつけ」の原理で、こうした学習能力を鍛えられる点は大きな魅力だろう。

 「動物に複雑な挙動を教えたい場合、かなり多くの時間が必要が必要となってきますが、この機器ならそうした時間を省くことができるんです」(トラーチェー氏)

 学習用グッズとしても有意義なClever Petだが、同機器がもっとも優れている点は、スマートフォンアプリと連動し、家にいなくてもClever Petの利用状況の確認や管理を行えることだ。アプリではClever Petがゲームをいつはじめるのかスケジュールを設定でき、犬がどれだけゲームをクリアしたのか、どれだけ餌を食べたのかなどの利用状況を知ることができる。

 また機器には飼い主の声を録音し、それを再生するためのスピーカーや、飼い犬の鳴き声をチェックできるマイクも備わっている。

 「犬たちは学習を通して成長するだけでなく、このゲームに夢中になり、挑戦することで、飼い主がいないという退屈や寂しさを解消することができます。そのため精神的にも良いですし、問題行動を抑えることができるのです」(同)。

米国のペット市場は約7兆円


 米国のペット市場は2014年時点で、585億ドル(約7兆円)以上の市場規模があるという。それだけペットに対してお金を使っている巨大市場に対し、Clever Petは飼い主が相手してあげられない時間のケアという価値を掘り起こした。

 「大抵の人は1日24時間、ペットと一緒に過ごしてあげるということはできない。飼い主と離れたとき、ペットはどうするのか。そこに着目したのが私たちの製品なのです」(同)。

 まだ本格的な販売を始めてはいないものの、KickStarterにおいて1142人の支援者から総額18万ドル(2160万円)以上の支援金を集めているのは、いかに多くの飼い主が「自分が留守の間ペットをどうするか」と言う点を心配しているかを表していると言えるだろう。今後多くの顧客からの購入が予想される、注視しておきたいサイトの1つだ。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
ゲーミフィケーションというかゲームそのものを採用している点が面白い。創業者が動物の行動学を学んでいるからこそできた製品だが、値段設定も普通に手が届くいい頃具合。アプリでどんなサービスが広がるか。

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