ニュースイッチ

半導体製造の契約期間を最長5年に変更するTSMCの強気

半導体受託製造(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が主要顧客に対して契約期間の単位を従来の1年間から3―5年間に変更すると通知したことが分かった。市況の需給逼迫(ひっぱく)を踏まえた強気の方針転換だが、半導体不足の深刻な自動車メーカーなどにとっては“条件改悪”となり、生産計画などの自由を奪われかねない。最近顕在化した産業界のパワーバランスの変化を如実に現す。

TSMCは従来、1年単位で顧客から半導体製造を受託していた。2020年末からの世界的な半導体不足を受けて経営方針を大きく見直し、より長期の契約を優先的に引き受ける戦略に転換したとみられる。

「これまでは1年で顧客から契約を切られることも覚悟して受託してきたが、現在の市況を踏まえて、より長期の仕事を選別して受ける姿勢に変わった」(業界関係者)と強気に転じた。ただ、半導体市場全体で見れば、すでに弊害も出始めた。

「TSMCがやらないと吐き出した注文が他の半導体メーカーに流れて、その結果フル稼働が続いて工場の設備トラブルを引き起こした事例もある」(同)と、しわ寄せが同業他社へ回る。需給バランスが崩れている足元の市況において新たなリスクとなりそうだ。

ただ、世界はTSMCを中心に動く。米国がTSMCの新工場誘致に成功すれば、米インテルも同じアリゾナ州に200億ドル(約2兆2000億円)をかけた新工場建設を決めた。

最近の半導体不足にサプライチェーン(供給網)への危機感を強めた欧州や日本もTSMCなどの工場誘致に力を入れる。経済安全保障上の“国際戦略物資”となった半導体の重要性は増すばかりだ。


【関連記事】 メモリーなき東芝の半導体事業は受託で生き残る
日刊工業新聞2021年4月2日

編集部のおすすめ