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東洋炭素が燃料電池向け電極触媒を開発、炭素材料に白金を固定し低価格化

東洋炭素が燃料電池向け電極触媒を開発、炭素材料に白金を固定し低価格化

「MH―18―PT50」の顕微鏡写真

東洋炭素は、触媒の土台となる「担体」と呼ばれる炭素材料に白金を固定(担持)した燃料電池向け電極触媒「MH―18―PT50」を開発した。4月1日に試薬を発売する。顧客の担持工程を短縮できるほか、白金を従来比2―3割減らしても同程度の性能を発揮でき、燃料電池の低価格化に貢献できる。2030年度までに従来品とMH―18―PT50を合わせた売上高で5億円を目指す。

触媒の担体に使う炭素材料「CNovel(クノーベル)」の新製品として、同社で初めて白金固定済みの製品を商品化した。エヌ・イーケムキャット(東京都港区)と共同開発した。

燃料電池用触媒の担体は、カーボンブラックが主流。表面に孔を持つものと持たないものがあり、外殻に白金が担持される。

クノーベルは「メソ孔」と呼ばれる直径2ナノ―50ナノメートル(ナノは10億分の1)の細孔を持つ炭素材料で、メソ孔同士がつながった「連通孔」が特長。耐久性にも優れるという。クノーベルはこの連通孔内部に白金を担持でき、白金が脱落しづらく、触媒の能力が保たれやすいため、白金を従来より減らしても同程度の性能を発揮できる。

ただ、クノーベルは細孔構造が複雑なため白金の担持が難しく、顧客が手がける担持工程で、その性能を十分に引き出せないのが課題だった。

開発品は触媒メーカーのエヌ・イーケムキャットの白金を分散・担持させる触媒化の技術やノウハウにより、クノーベルが白金を最適な状態で担持している。顧客の担持工程の短縮や燃料電池の低コスト化につながる点を訴求し、販売を広げる。

【オンラインセミナー】注目の「全固体電池」は何を変えるのか?
日刊工業新聞2021年4月1日

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