「20トン以上は水素ショベルの出番」日立建機は安価な中国産とどう戦う?
日立建機が環境対応の一環で電動ショベル開発に力を入れている。2020年の8トン車に続き、21年度中に5トン車も投入する計画だ。水素エンジンショベルの開発にも意欲を示す。一方、コロナ禍で顧客の新車買い控えが続くとみて、レンタルの強化など新車に依存しない体制作りを継続する。平野耕太郎社長に戦略を聞いた。
―欧州で新型コロナウイルス変異株の影響が拡大しています。
「工場全面休止という事態ではないが、多少の影響は出ている。建設工事は止めなくても現場で感染者が出ればペースは鈍る。本格回復には半年から1年かかる。鉱山関係はさらに厳しく、本格回復は22年度以降とみる」
―20年度は中国市場だけが好調でした。
「中国の需要は21年度は下がる。コロナ禍で20年の春節需要が後ろ倒しになった分がなくなる。台数は実稼働に対して明らかに過剰だ。20年末に土木用に特化した低価格機種3種を中国で発売した。当面はこれをしっかりと売ることに尽きる」
―電動ショベル開発を進めています。
「欧州はヘルシンキなどの都市が電動化を推奨している。10トン以下の小型を中心に、この傾向が強まるのは間違いない。20トン以上になると現状はパワーの面で苦しい。そこで水素ショベルの出番となり、日欧の研究機関や大学、企業と接触を図っている。一方で、二酸化炭素(CO2)削減の答えは電動ショベルだけではない。鉱山ダンプならトロリー式(架空線集電式)だとCO2も燃費も減らせる。当社が高シェアを握るアフリカに加え、豪州や南米の鉱山会社にもトロリー式の超大型ショベルやダンプを売り込みたい」
―レンタルや部品メンテナンスなどの「バリューチェーン事業」を強化しています。
「売上高の半分をバリューチェーン事業にするのが目標だ。遠隔操縦などの高機能化に電動化や水素エンジン化などが加わると、新車価格はますます高くなる。ユーザーはレンタルや中古機で投資を抑えようとするだろう。新規購入をためらう顧客に、レンタルでの試行を提案する方法もある。レンタルもメンテナンスも頭の使い方が必要になる」
記者の目/電動・水素利用、数字以上の効果
世界の建機市場で電動ショベルの割合は、まだ小さい。ただ欧米など先進国は環境対応にかじを切り、国連の持続可能な開発目標(SDGS)とも絡んで、この動きはコストの問題抜きに強まることが予想される。安価を武器とする中国メーカーに対抗するためにも、電動や水素利用に力を入れるメリットは企業イメージや存在感など、数字以上の効果があるはずだ。(編集委員・嶋田歩)
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