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印刷インクメーカー、顔料や樹脂事業で培った知見を生かして新製品開発へ

低誘電材料、LIB・5G用開拓
印刷インクメーカー、顔料や樹脂事業で培った知見を生かして新製品開発へ

第5世代通信(5G)対応の低誘電熱硬化型接着シート(東洋インキSCHD提供)

印刷インクメーカーが顔料や樹脂事業で培った知見を生かし、エレクトロニクスやヘルスケアなどの新製品開発に取り組んでいる。東洋インキSCホールディングス(HD)は2021年12月期から3カ年の経営計画で、リチウムイオンバッテリー(LIB)材料や第5世代通信(5G)市場向けの低誘電材料といった分野で、収益事業群の形成を図る。出版物向けインクの市場縮小が止まらない中、各社は新しい事業の柱の構築を急ぐ。(江上佑美子)

営業益7割増

東洋インキSCHDは中期経営計画で「グリーン」「デジタル」「健康」を成長分野に位置づけた。23年度の売上高を20年度の約2割増となる3000億円、営業利益を同7割増の220億円に伸ばす計画だ。

長期テーマに取り組むHD傘下の研究所に加え、中核事業会社3社それぞれに、2―5年間の中期開発テーマに取り組む研究所を新設した。HD傘下の研究所とも連携し、早期の事業化、商品化を図る。「これまでとかく10年先、20年先ばかり追いかける傾向にあった。技術は世に問うて認められて、初めて完成する」と高島悟社長は説明する。次世代の色材や、新しいポリマーなどの開発を進める方針だ。

印刷インクで世界トップシェアのDICは21年12月期が最終年度の中期経営計画で、事業の質的転換や、ヘルスケア、モビリティー、次世代パッケージングといった分野の新事業創出を進めている。21年度においても「新規事業や研究開発(R&D)、DX(デジタル変革)に費用をかけていく」(古田修司執行役員)方針だ。

顔料事業買収

ポートフォリオ転換の一環として、独BASFの顔料事業買収を決定。コロナ禍の影響などで手続きが遅れているが、6月末までには完了予定だ。

サカタインクスは30年12月期までの長期ビジョンで、エレクトロニクスケミカルなど4分野の新事業に注力する。達成に向けて策定した21年から3カ年の中期経営計画では、M&A(合併・買収)を中心に戦略投資を進める。

新型コロナの影響は今後も続くと見られる。かねて続くデジタル化による出版物の販売減に加え、新型コロナによるイベントや観光の自粛によるチラシやパンフレットの需要減で、特に出版インク分野は厳しい状況だ。

販売量2割減

経済産業省の生産動態統計によると、チラシや雑誌などの印刷に用いる平版インクの20年の販売量は前年比約2割減の7万7666トンだった。各社は「逆風を変革のチャンスとする」(高島東洋インキSCHD社長)構えで、アフターコロナを見据えた取り組みを進める。

日刊工業新聞2021年3月25日

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