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油圧ショベルを進化させた日立建機流オープンイノベーション

専門チームで自動化
油圧ショベルを進化させた日立建機流オープンイノベーション

豊田織機などと開発した油圧ショベル

 産業界でオープンイノベーションが定着してきた。建設機械のニーズが多様化する中、日立建機でも専門の支援チームを2018年に立ち上げ、その動きを加速する。実際に17年に市場投入したハイブリッド油圧ショベルなどにも外部の力を借りた。オープンイノベーションを活用する背景や同チームが果たす役割などを追った。(文=編集委員・松沢紗枝)

 日立建機では、建機の情報通信技術(ICT)対応や自動化などを推進。だが、自社の技術だけでは足りない部分が出てきた。時代の変化が早くなる中で、製品化までの期間も短期化が求められる。開発の対象も建機だけでなく、建設現場の関連業務を支援するICTサービスなどにまで広がっている。

 そこで、外部研究リソースの活用は不可欠と判断した。例えば、ハイブリッド油圧ショベル「ZH200―6」は、豊田自動織機や日立オートモティブシステムズとのオープンイノベーションで完成させた。

 3社のモーター一体型の新型ハイブリッドエンジンやリチウムイオンバッテリーなどの自動車・産業車両分野の技術を融合させた。その結果、従来機「ZH200―5B」と比較して約12%、また、標準機「ZX200―5B」と比較して約25%、さらに「ZX200―3」と比較して約40%の燃費低減を実現した。

 ただ、オープンイノベーションを進めるには、自社に必要な技術の発掘などさまざまなノウハウが必要だ。そこで専門チームでの支援を決めた。

 同社の「オープンイノベーション支援チーム」は、研究・開発本部先行開発センタ内に設けた専門チーム。4人が在籍しており、オープンイノベーションに関わる業務に携わっている。元々、大学などとの社外共同研究や、親会社である日立製作所の研究開発部門の進捗(しんちょく)管理などに携わってきた人員で構成される。

 業務内容は、オープンイノベーションで可能な予算枠の設定や技術課題の明確化、外部技術、組織の探索、外部組織との関係構築(面談、契約締結)などがある。これまでに数十件のオープンイノベーション案件を手がけてきた。

 現在は、関連業務を支援するという立場だが、将来的には「外部リソースだけを使った研究開発に専念するチームとして形を変えていきたい」(先行開発センタの枝村学センタ長)という。従来通りの支援活動だけでなく、研究自体も行っていく。今後3―5年後には人員も20人程度にまで増員させる。

 また、ともに油圧ショベルを開発した豊田織機とは、ホイールローダーをOEM(相手先ブランド)供給するなど、良いビジネスパートナーとして関係が継続している。「他社とも、こうした関係が築けるようになれればいい」(枝村センタ長)としている。
日刊工業新聞2019年9月25日

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