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“DXの波”に乗るTDK、目指すは地球規模の課題を解決する電子部品

“DXの波”に乗るTDK、目指すは地球規模の課題を解決する電子部品

電池事業では家庭用蓄電池システムなど向けに注力する(同システムや電動バイクなど向けパワーセル)

電子部品の需要増が続いている。電子情報技術産業協会(JEITA)がまとめた日本メーカーによる2020年12月の電子部品世界出荷額は、前年同月比11・8%増の3433億円と、4カ月連続プラスだった。巣ごもり需要や第5世代通信(5G)の普及で通信機器向けが好調。電動化が加速する自動車向けも回復基調にある。この追い風を自社の成長にどう生かすのか。各社の動きを追った。1回目はTDK。

TDKは1935年、東京工業大学が発明した磁性材料「フェライト」の事業化を目的に創業した。このフェライトを源流とした素材技術を武器に、磁気ヘッドなどの「磁気応用製品」を中心に存在感を示してきた。

現在の主力は、薄型から大容量に至る電池や電源などの「エナジー応用製品」で、売上高の約4割を占める。電子機器のノイズ低減などに使うセラミックコンデンサーなどの「受動部品」も同3割を占めるようになった。

いずれも、コロナ禍で加速したデジタル変革(DX)で需要が堅調だ。2020年10―12月期は四半期ベースの売上高、営業利益で過去最高を更新。21年3月期連結業績予想も上方修正した。電動化が進む自動車市場向けの受注が回復。在宅勤務やオンライン授業向けパソコン、5Gスマートフォン向けの販売も伸びた。“DXの波”に乗った企業の一つと言える。

ただ、「センサ応用製品」の20年10―12月期の営業損益は41億円の赤字だった。IoT(モノのインターネット)需要を取り込もうと、16―17年に総額約2000億円を投じて米インベンセンスなど5社のセンサー関連企業を買収したが、営業赤字が続く。

要因の一つが、インベンセンスのスマホメーカー1社への依存体質だ。この課題を解決すべく、TDKの顧客基盤を活用した販路開拓を進め、中国と韓国のスマホメーカーや日本の家庭用ゲーム関連メーカーなどからの受注を獲得した。イヤホンなどのノイズキャンセリング向けMEMSマイクロホンの営業も注力したことでスマホメーカーからの採用数が増加。「3年以内に黒字化する」(石黒成直社長)意向だ。

このほか、小型で低消費電力の二酸化炭素(CO2)検出用ガスセンサーを投入。コロナ禍で需要が高まった屋内換気向けの用途開拓を狙う。

主力事業である電池・電源はスマホ向けが6割を占めることから、中国市場でバイクやスクーターなど電動2輪車向けを拡販。家庭用蓄電池向けも注力する。

22年3月期は新たな中期経営計画が始まる。こうした地球規模の社会課題解決を解決する電子部品の投入を成長につなげることが、社是「創造によって文化、産業に貢献する」の実践となる。

▽所在地=東京都中央区日本橋2の5の1日本橋高島屋三井ビルディング、03・6778・1000▽資本金=326億4197万円▽売上高=1兆3630億円(2020年3月期)営業利益=978億円▽従業員=10万7138人▽設立=1935年(昭10)12月
日刊工業新聞2020年3月22日

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