キリンの独走にサントリーは割って入れるか。「糖質ゼロ」がビールの主戦場に!?
糖質ゼロのビールでいよいよ競争がスタートする。キリンビールが2020年10月に発売した糖質ゼロのビール「一番搾り 糖質ゼロ」に続き、サントリービールが4月に糖質ゼロビール「パーフェクトサントリービール」を発売する。酒税法改正によるビールの減税や、コロナ禍で高まる健康志向を背景に、キリンは10日に販売数量が累計1億本を突破するなど好調に推移している。キリンの独壇場にサントリーが割って入る格好だ。(高屋優理)
ビールは味わいがアルコールや糖質によるところが大きく、麦芽比率の制限もあるため、カロリーオフや糖質ゼロといった機能とは二律背反の関係にある。アサヒビールの塩沢賢一社長は「ビールでは制約が多く、機能性商品の開発は技術的に難しい」と話す。アサヒも16年に糖質50%オフのビール「アサヒ・ザ・ドリーム」を発売したが、19年に終売。塩沢社長は「ビールに求められるのは味」と、機能と味の両立の難しさをにじませる。
20年10月の酒税法改正で先手を打ったキリンは開発に5年をかけた。発酵の際、酵母が食べられる糖を多く含んだ麦芽を選定。さらに350回以上試験醸造を繰り返し、最も酵母が糖を食べる条件を見いだした。
「これまでの技術力を駆使し、酒税改正のタイミングで発売する」(布施孝之キリンビール社長)と、満を持して発売し、コロナ禍で家庭用の缶商品のシェアが高まる中、2月中旬までに250万ケースを販売。1、2月の一番搾りの缶商品販売が前年比70%増となるなど、ブランド全体を押し上げた。
後発となるサントリーは16年から技術開発に着手。独自の発酵技術で糖質の元となるでんぷんを時間をかけて分解することで、糖質をゼロにしながら、アルコール度数を5・5%維持する技術を開発し、特許を取得した。キリンの4%に比べ、アルコール度数を高め、味と機能を両立。サントリーがビールの新ブランドを発売するのは6年ぶりで、マーケティングにもおのずと力が入る。
すでにキリンが牙城を築く市場に割って入る格好だが、サントリービールの和田龍夫執行役員は「19年にテストマーケティングしたが、改良の余地があると判断した。早く出すことはできたが、満足して出せる」と完成度に自信を見せる。
これまで技術的なハードルの高さから機能性商品は発泡酒や第三のビールが主流だった。今後は技術力向上や減税で、機能性商品の主戦場がビールに移る可能性が高そうだ。