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養殖×IoT、いけす管理の給餌機でエサ代の削減や作業の負担軽減

養殖×IoT、いけす管理の給餌機でエサ代の削減や作業の負担軽減

養殖場に設置されたIoT技術搭載の給餌機(写真中央、福伸電機提供)

福伸電機(兵庫県福崎町、宮内康伴社長)は、2019年にIoT(モノのインターネット)を活用し海上の養殖いけすを管理できる給餌機を発売した。これまで10カ所以上の事業所で導入され、養殖業者からはエサ代の削減や給餌作業の負担軽減につながったと好評だ。

給餌機は、いけす内部のカメラや環境センサーで取得した水温、海中の酸素濃度といったデータをクラウドシステムに送る。利用者はタブレット端末やスマートフォンを介し、養殖魚の様子を確認できるほか、遠隔操作によって人に代わって給餌する。

導入先からは魚を全体で1キログラム太らせるために必要なエサ量を示す値である増肉係数が低くなり、エサ代を抑えられたと評価された。また、いけすに行かなくても遠隔監視できたとの声も寄せられた。

福伸電機ではさらなる自動化を目指し、21年中に人工知能(AI)を活用した自動給餌機の製品化を進めている。画像を基にAIが養殖魚の食欲の変化を判断して自動でエサを与える仕組みだ。

養殖業界は新型コロナウイルス感染症の影響を受けている。飲食店に卸す魚の需要が減り、給餌機といった投資に向きづらい。ただ、同社は漁業の人手不足の問題もあることから、コロナの収束後に期待する。

ベンチャーのIT事業者が水産業に新規参入するケースも出ている。それだけに商品事業部の山中実事業部長は「AIで自動給餌したら、それで終わりではない。給餌機を進化させないといけない」と気を引き締める。

同社では風雨にさらされても安定して稼働する給餌機を40年以上手がけてきた技術力と、年間1000台以上の給餌機を安価に提供できる強みに挙げる。一方で、新たな技術開発は不可欠として他社との協業にも前向きな姿勢をみせる。新たな付加価値製品を展開しつつ、給餌機事業で24年1月期に売上高10億円の大台を目指す。(姫路・村上授)

日刊工業新聞2021年3月18日

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