ゴルフカート技術を公道で活かす!ヤマハ発動機が各社と連携
ヤマハ発動機はゴルフカートを利用した低速自動運転システムで実装を目指し、さまざまな団体と連携し、活用方法を模索している。低速自動運転車事業について、技術・研究本部の飯田実研究開発統括部長に聞いた。(浜松・岩崎左恵)
―低速自動運転車事業を始めるきっかけを教えて下さい。
「国内のゴルフ場向けゴルフカート需要がシュリンク(縮小)気味になり、ゴルフ場以外の市場を開拓することになった。そうした中で『地域活性化のために使わせてほしい』と石川県輪島市の輪島商工会議所から声がかかった。2014年にゴルフカートをベースに公道を走れるようにし、高齢者らの移動手段確保のために使う実証実験を始めた」
―当初から連携を考えていましたか。
「自分たちだけでできないことは分かっていたが、どことやるかまでは考えていなかった。輪島商工会議所は早い段階で声をかけてくれたので導入がスムーズだった。実証や実装となると事業的にパートナーが必要で課題意識を共通できたところと関係を深めている。20年度は18カ所で車両提供などを行い実証実験を実施している」
―事業化した例はありますか。
「アサヒタクシー(広島県福山市)がタクシー業者として全国初の『緑ナンバー』を取得した。国土交通省の低速電動モビリティーを使った実証実験に採択され、(ヤマハの低速自動運転システムを使用して)実証実験をした後、購入してくれた。他団体が導入を検討する際の例となり、新しい関係性が生まれている。現在2台導入されている」
―連携を通じて学んだことはありますか。
「自社でやりたいことと、一緒に関わっている事業者のやりたいことは完全に一致していない。両者で望むことが実現した時に、技術的にも事業的にも広がりがあると感じた。ゴルフカートを公道で走らせることでアトラクション的な要素が加わり、乗客と会話が弾むようになった」
―今後の展開は。
「現在は活用を望む事業者からの声かけが多い。さらに発展させるため、より戦略的なパートナーとの連携を考えながらやっていく必要がある。パートナーを見つけて社会問題の解決につなげたい」
*取材はオンラインで実施。写真はヤマハ発動機提供チェックポイント/高齢者の“日常のゲタ”に
現在、自動運転技術は、主に地面に埋めた誘導線からの磁力線を感知し、車両の動作を制御する電磁誘導式を採用している。実際の現場では電磁誘導線があるところもあるが、低速で走るモビリティーとして使用することが多く、手動運転で高齢者や観光客などの足として使われている。時速は20キロメートル程度と遅く、安全であることが特徴だ。過疎化が進んだ町村などで、高齢者が出歩きたくなるような乗り物にすることも目標の一つである。