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政府目標で持ち越しとなった2輪車の電動化…ヤマハ発動機社長の考え方は?

政府目標で持ち越しとなった2輪車の電動化…ヤマハ発動機社長の考え方は?

ヤマハ発動機公式サイトより(写真はイメージ)

―2021年の見通しは。

「先進国向けの2輪車や4輪バギー、マリンの小売りの動きは、引き続き好調だとみている。20年6月以降、需要が回復し、販売店の在庫が減ってきている。現在売り逃し状況が発生しており、上期は販売店の在庫補給が途切れないことに集中する。新興国向け2輪車の需要も非常に緩やかだが回復傾向にはある。21年中には19年度並みに戻るのではないか」

―2輪車の販売戦略は。

「先進国ではウィズコロナの環境下で、アウトドアやパーソナルの移動手段として新規に購入するお客さまもいる。買ってみた人が次に買い替えサイクルに入り定着するには、楽しんでもらうことが一番だと考えている。一方、新興国ではデジタルな顧客接点をつくることが必要。スマートフォンで予約などをして販売店で商品を見てもらう、といったようなバーチャルとリアルをうまくつなげられるようにする。インドネシアなど東南アジア諸国連合(ASEAN)で広げていく方針だ」

―2輪車の電動化についての考え方は。

「社会からの要請もあるのでチャレンジする。50年度に製品からの二酸化炭素(CO2)排出量を(10年度比)半減させることなどを盛り込んだ、当社グループの環境計画は、かなり見直す必要がある。電動化は2輪車で言えば、日々の移動手段として使う原付き領域が先になるだろう。これまで考えていた以上にスピードを上げる必要がある。ただ趣味として乗る2輪車については、技術的には可能だが価格が高くなったり、重量が重くなったりするため正直ハードルが高いと感じている」

―コロナ禍を受け変えることは。

「部品サプライチェーン(供給網)の事業継続計画(BCP)をバージョンアップすること。例えば今回、アジアでの部品調達が止まると米国、日本、台湾、中国などでも生産が止まることが分かった。調達の仕方、世界の工場のあり方、必要な在庫の持ち方などを含めて見直す。リモートでの働き方をうまく使えるようにすることにも取り組む」

【記者の目/政府目標・各国規制を注視】

30年代半ばまでに新車販売を全て電動車にする政府目標では今回、2輪車の扱いは持ち越しとなった。ヤマハ発動機は電動スクーター「E―Vino(イービーノ)」を展開するが電動商品は限られる。発動機を社名に持つ同社。今後の2輪車の電動化に対する政府目標や世界各国の規制次第で大きな影響を受けることになる。(浜松・岩崎左恵)


日刊工業新聞2021年1月7日

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