アパレルECの差別化に!「ウェブデザインシミュレーター」で支援する鯖江市の企業
エーリンクサービス(福井県鯖江市、山本禎久社長、0778・42・5008)は、アパレル向け電子商取引(EC)サイトの制作支援サービス「MogaDigi(モガデジ)」を始めた。目玉はウェブデザインシミュレーター。Tシャツやマグカップなどにイラスト、ロゴを印刷したイメージを3次元(3D)画像で見ることができる。消費者がオリジナルグッズや記念品をデザインして確認できるようになり、市販品に自分だけのデザインを足せる。アパレルECの差別化として提案する。
「4割がシミュレーターから入稿される。売り上げを3割増やす効果があった」。山本社長はウェブデザインシミュレーターの効果をこう説明する。同社は販促品やイベントグッズなどのトートバッグを製造する。景品などはデザイン案がイベント直前に固まることが多く、デザイン入稿後に試作を繰り返して間に合わせることがある。この煩雑なやりとりを効率化できる。
簡単に調整
シミュレーターにイラストをアップすると大きさや配置、色を調整して3D画像で仕上がりを確認できる。ユーザーが簡単に調整できるようインタラクティブなインターフェースを整えた。同社ではシミュレーター経由のデザイン入稿が4割を占めるようになった。
こうした機能をモガデジで外販する。ウェブブラウザー上で完結するためアパレルECに組み込みやすい。コロナ禍を機に自社でECサイトを構築するメーカーは多いが、差別化が難しかった。シミュレーターで消費者がデザインに手を加えられるようになる。ライトプランの利用料は月額5000円(消費税抜き)から。まず100件の導入と、1億円の売り上げを目指す。
新サービスは2018年に欧州の縫製業を視察したことがきっかけとなった。インダストリー4・0(第四次産業革命)が掲げられ、マスカスタマイゼーション(個別品の大量生産)が進んでいた。山本社長は「ミシン1台1台にモニターが付き、作業者に次の工程が指示される。日本の縫製業でこんな投資をしている会社は見たことがなく衝撃だった」と振り返る。ドイツでは人件費の安い東欧諸国と競争しているが、それでも産業が元気な理由はマスカスタマイゼーションにあった。
スマート化
ただ当時、同社は「縫製の初心者だった。それならば顧客対応のスマート化を進めようと決めた」(山本社長)。マスカスタマイゼーションは営業から製造、納品までを個別対応する必要があるため、営業から製造までをスマート化するデザインシミュレーターの開発を決断。顧客がデザインを調整して入稿すれば完全データで生産を始められる。
そこでコンピューターグラフィックス(CG)制作などの人材をそろえて開発した。コロナ禍で店舗販売からECへの大移動が起きたが、山本社長は「準備してきたものが間に合った。慣れないECに苦労するメーカーは多い。新サービスはその一助になれる」と強調する。(小寺貴之)