仏教がSDGsと結びつく! 龍谷大学のユニークな活動
ソーシャル企業認証 社会に役立つ事業に資金
仏教系の大学である龍谷大学が、「仏教SDGs」という独自の視点で国連の持続可能な開発目標(SDGs)に取り組んでいる。社会課題を解決するソーシャルビジネスを育成し、すでに関西の大学ではベンチャーの数が京都大学、大阪大学に次いで3番目に多い。今後、どのような活動を行っていくのか、入澤崇学長に聞いた。
仏教系の大学である龍谷大学が、「仏教SDGs」という独自の視点で国連の持続可能な開発目標(SDGs)に取り組んでいる。社会課題を解決するソーシャルビジネスを育成し、すでに関西の大学ではベンチャーの数が京都大学、大阪大学に次いで3番目に多い。今後、どのような活動を行っていくのか、入澤崇学長に聞いた。
―仏教SDGsとは何ですか。「『誰一人取り残さない』というSDGsの理念は、仏教の『摂取不捨(すべての者をおさめとって見捨てない)』という教えに極めて重なる面がある。仏教の『利他』の精神でSDGsに取り組むことを仏教SDGsと呼んでいる」
―具体的な活動は。「ユヌス・ソーシャルビジネス・リサーチセンター(YSBRC)を中核拠点に社会起業家育成プログラムを実施している。このセンターは貧困者向け無担保融資のグラミン銀行でノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏の名を冠し、創立380周年の2019年に設立した。また20年12月には京都信用金庫など地元3金庫と組み、社会課題の解決に取り組む企業を認証する『ソーシャル企業認証制度』を創設した。現状は富が一部の限られた人たちに偏在している。この制度でソーシャル企業を認証・応援し、社会に役立つ事業へ資金が流れる好循環をつくっていきたい」
―なぜ仏教系の大学がビジネスを推奨するのですか。「仏教がインドからアジア全域に普及した背景には、商人の存在があった。商人は当然、自己の利益を追求するものだが、仏教と接点を持つことで、より大きな利益、社会的利益に気がついていく。日本では三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)で知られる近江商人が全国に商売を広げた。その多くは浄土真宗の信者だった。『世間よし』の考えに影響を与えたのは仏教だった。三方よしの発想は、SDGsの精神に通じている。仏教と商人は、実は近しい関係にある」
「コロナ禍で景気後退した影響を受けているかもしれない。しかし、学内のビジネスプランコンテストに参加してみると、あと一歩で起業まで届きそうな学生は多い。今後、また増えていくだろう」
―将来の目標は。「2021年度から全学をあげてSDGsに取り組む方針だ。持続可能な社会を構築するには何が必要なのか本気で考えていきたい。一人ひとりの教員が17のSDGsのゴールのうち、自分の研究はどのゴールに貢献するのかを明確に意識できるようにしていきたい。仏教SDGsならではの、独自の活動を多く手がけていきたい」
SDGsは目標だけを定めており、達成に向けたプロセスは組織・企業ごとに自由な解釈で取り組んでいいことになっている。さまざまなSDGsの活動が出てきているが、SDGsの捉え方そのものに独自性があるのは珍しい。仏教SDGsという発想は、自社オリジナルの取り組みを推進したい企業にとって、一つのヒントになるだろう。(大城麻木乃)