「エンジンの達人」ホンダの新社長はEVシフトを加速できるか
三部氏の昇格を今日正式決定
ホンダは6年ぶりに社長を交代する。八郷隆弘社長(61)の後任に、三部敏宏専務(59)を昇格させる人事を19日の取締役会で決定後に発表する。自動車業界では電動化などを巡り競争環境が変化している。研究開発部門トップの三部氏を起用し、電気自動車(EV)や自動運転技術の開発を加速する。
三部氏はエンジン開発など技術畑を歩み、2019年にホンダの社長への「登竜門」とされる、研究開発子会社の本田技術研究所のトップに就いた。その後にホンダは米ゼネラル・モーターズ(GM)とEVの共同開発に着手し、中国車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)に出資するなど、提携戦略を加速している。
ホンダの社長は歴代、八郷社長以外は本田技術研究所のトップを経験している。三部氏も経験しており、ホンダの社長の本流に戻った人事といえる。6年程度での社長交代もセオリー通り。ただ、社長交代決定までには、コロナ禍の中で、八郷体制の続投の可能性もあったが、CASEの潮流に乗るには技術系の三部氏が最適との結論に達したようだ。
次世代車の開発では米中のハイテク企業など異業種の参入を含め競争環境が大きく変化している。ホンダは20年にGMと北米での4輪事業の提携拡大の検討でも合意。EVや自動運転技術への経営資源の集中にも取り組む。三部氏にはGMなどとの提携戦略を軌道に乗せ、次世代技術やサービスの競争力向上が求められる。
【略歴】三部敏宏氏(みべ・としひろ)87年ホンダ入社。14年執行役員、18年常務執行役員、19年本田技術研究所社長を兼務、20年専務取締役。
日刊工業新聞2021年2月19日