大学通信教育に熱視線、オンライン授業浸透で高まる関心

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大学のオンライン授業が浸透し、同様の手法を採る大学通信教育への関心が高まっている。通信教育課程を併設する私立大学は培った教育ノウハウを、新型コロナウイルス感染症対応の通学課程に転用した。また新潟産業大学が4月に開設する通信課程は芸術、スポーツや家業との“ながら学び”がしやすいよう、映像授業は10分単位の内容をつなぐ。学びの手法が多様化し、刺激し合う展開となってきそうだ。(編集委員・山本佳世子)

通信課程 ノウハウ活用

大学通信教育は60年超の歴史があり、学部は約40の私立大が課程を置く。教師や保育士など職業資格を目的とする社会人の受講が多く、放送大学のほか各短大・大学院を含め約24万人が学ぶ。

伝統的な方式は印刷教材での学習、課題リポートの提出と添削だ。さらに試験を経て、単位を取得。大規模校なら全47都道府県で試験が行われる。学部卒の学士取得なら、124単位まで積み上げる。

他に実習や実技を含む面接授業(スクーリング)を組み合わすことが多い。IT活用のメディア授業も増えており、これがいわゆるオンライン授業に相当する。

私立大学通信教育協会の高橋陽一理事長(武蔵野美術大学教職課程教授)は「メディア授業は本人確認や学力評価、綿密なコミュニケーションと配慮することが多い。教員以外の支援スタッフが重要だ」と通学課程に生かした通信課程のノウハウを説明する。新型コロナを機に広がる通学課程のオンライン授業でも、ここが課題となっている。

もっとも文部科学省は2001年に大学通信教育の設置基準を改正し、メディア授業だけの全124単位取得を可能にしている。ITの発達で、対面でなくてもきめ細かな学習指導ができるようになってきたのが理由だ。

新潟産大 10分動画“ながら学び”

新潟産大が既存の経済学部経済経営学科の中に開設する通信教育課程も、卒業まで全てオンラインで完結するのが売りだ。通称は「ネットの大学 managara」。クリエイターやアスリートの夢、世界各地の訪問や子育てなどと、大学教育の二兎を追うことを勧める。

映像授業の1コマは10分単位の内容をつなげたもので、スマートフォンを使って移動中など隙間時間に学ぶスタイルを想定する。近年、大規模公開オンライン講座(MOOC)や社会人向け講座で人気の形だ。「いつでもどこでもだれでも、何かをしながら学ぶ、学びながら何かをすることが可能になる」と星野三喜夫学長は強調する。

「ネットの大学 managara」で連携した新潟産大の星野学長(左)とウィザスの生駒社長(同大提供)

同大は教育事業のウィザスと提携して準備をしてきた。同社の生駒富男社長は「国内の全高校生約300万人のうち、約20万人が通信制高校で学んでいる」と説明する。夢に向けた活動を優先したり、対人関係や病気で問題を抱えたりで、全日制高校でなかった層を同大は狙う。

阿野孝学長補佐は「全国を旅して地域貢献しながら経済経営を学ぶ学生を、他組織と連携して支援する形もあるかもしれない」と、新時代の大学教育の絵を描いている。

日刊工業新聞2021年1月29日

COMMENT

山本佳世子
編集局科学技術部
論説委員兼編集委員

「通信教育の一部の手法が、オンライン授業に相当する」というのが先の疑問に対する結論だ。昔ながらの通信教育を知る年長世代であれば、「なるほど、通信教育でもスクーリングなど重要な教育手法があるからだな」と考えるのではないか。ところが実は20年近くも前に、通信教育では「メディア授業(オンライン授業)だけで全124単位取得が可能」になっていた。これはちょっと驚きだ。通信制でも通学制でも、取得する学位に大きな差はない。となると通学制における、オンライン授業による単位取得の制限は、ポストコロナで相当、緩和されるのではないか。

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