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東京マラソンの地図も受注した「ミウラ折り」、“売り上げを買っていた”ずさんな倒産劇

miura-ori lab、コロナ禍で粉飾決算露呈
東京マラソンの地図も受注した「ミウラ折り」、“売り上げを買っていた”ずさんな倒産劇

miura―ori labの製品(イメージ)

miura―ori labは特殊技術を有し、資産超過の決算書を開示していたが、突如2020年12月28日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。

同社は1996年11月に設立。東京大学名誉教授が編み出した「ミウラ折り」の加工技術を強みに事業を展開。同技法は対角線部分を持って畳んだ状態から左右に引っ張るだけで一気に開閉ができる折り方で、スペースシャトルに搭載する太陽電池パネルを折り畳み、宇宙で展開する際にも用いられた。

同社は、ミウラ折りの商標登録を有していたほか、手作業での技術しか有していない業者が多いなかで、特殊加工機械の開発により大量加工が可能だった。こうした強みを生かし、東京マラソンのルートマップ図を受注するなど対外的な評価を高めていた。

しかし18年7月ごろから不可解な取引に手を染めていた。具体的には官公庁案件を受けた元請け業者から同社が受注(下請け)を受け、その受注価格より15%から20%高い金額で、元請け業者が指定する業者に仕事を発注(孫請け)していたのだ。つまり手数料を支払い、売り上げを買っていたという解釈ができる。

同商流による赤字は決算書上では修正されていた。客観的に見れば、身を滅ぼすスキームだということが明らかだが、対外的信用の獲得に焦り誤った選択をしてしまったようだ。また、新型コロナウイルスの影響でイベント中止に伴うパンフレット案件が頓挫し、売り上げが立たなくなった。これが追い打ちとなり、自己破産の申し立てを決意した。

粉飾決算は、資金にゆとりがある時期には判明しづらい。たとえ債務超過であったとしても、手元資金が回っていれば、その事実が明るみに出ることは少ないだろう。しかし、今後コロナ禍で売り上げ確保が厳しくなり、資金が枯渇した中小企業が「実は粉飾決算だった」という事例が増えてくる可能性は念頭に置いておかなければならない。

(文=帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2021年1月26日

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