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コロナ禍で厳しい腕時計、セイコーHD社長はそれでも「高級品は攻め続けなければ」

中村吉伸氏インタビュー
コロナ禍で厳しい腕時計、セイコーHD社長はそれでも「高級品は攻め続けなければ」

グランドセイコー公式サイトより

―2020年はグランドセイコー(GS)の誕生60周年でした。

「究極の機械式機構とも言える『T0』を発表した。技術力を示す取り組みで非売品だが商品化できる力はあると考える。また、販売を強化してきた米国では5000―1万ドル台の販売で4位に入った。今後もさらにブランド価値を高めて支持拡大につなげたい」

―引き続き情報発信強化が欠かせません。

「時計の国際見本市『バーゼルワールド』の衰退や会員制交流サイト(SNS)を用いた情報発信の活性化を受けて、(機械式ウオッチ製造拠点の)盛岡セイコー工業に木造のGS専用工房を新設した。同社では太陽光発電の活用や敷地内の森林保護など環境に関する取り組みも盛んだ。職人技や自然との調和を伝える場として、コロナ禍収束後には各所から見学が来るだろう」

―腕時計事業には厳しいコロナ禍ですが、システムソリューション事業にとっては飛躍の好機でもあります。

「第3の柱を目指して、ストックビジネスの拡大と多角化を軸に育ててきた成果が出ている。項目ごとに増減はあるがコロナ禍でも目標通り進んでいる。25年に売上高500億円・営業利益50億円を目指しているが、計画を前倒しするほどの勢いを期待している」

―22年度(23年3月期)からの次期中期経営計画も含めて今後の戦略は。

「既存事業の拡大と同時に、事業ごとの強みの整理とシナジーの創出で新事業を生み出さなければ企業として発展できない。次期中計は新規事業や人への投資が強まるだろう。実行に向けてすでに、セイコーインスツルからHDへの研究開発機能の移管やインキュベーションセンターの新設、子会社の統合と組織内を整えている」

―現中計は“攻め”がテーマでした。特に腕時計はその姿勢を続けるのでしょうか。

「高級品は攻め続けなければならない。(現中計以降も)基本は攻めだ。数年後にはウエアラブルデバイスも高レベルな製品が増える。そことは違う世界観に磨きをかけなければならない」

セイコーHD社長・中村吉伸氏
【記者の目/節目の年、販売拡大が課題】

海外との往来の制限が続く中で、腕時計は各国内での売り上げ拡大が課題だ。嗜好(しこう)品が苦戦するコロナ禍だが、娯楽の機会が減ったことで高機能・高品質に対する需要が強まった側面もある。21年は創業140周年。歴史が訴求力の向上に一役買いそうだ。(国広伽奈子)

日刊工業新聞2021年1月20日

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