“子ども社員”も活躍する創業97年の家具メーカー、既成概念にとらわれないモノづくり
サイズ抑え、移動もしやすく
「日本中の親心に、おせっかいでありたい」。一風変わったコンセプトを掲げるのは、7月に創業97年を迎える子ども用家具メーカーの大和屋(愛知県安城市、太田啓一社長)だ。“子ども社員”など独自の制度を設け、既成概念にとらわれないモノづくりに取り組んでいる。2020年11月に折り畳み式のベビーベッド「パタンII」を発売した。
サイズは幅103センチ×奥行き65センチメートル。折り畳むことで幅47センチメートルになり、狭い場所でも収納できる。標準のベビーベットのサイズは幅120センチ×奥行き70センチメートルの物が多い。そのため、アパートやマンションなどで子育てする家族は「想像より大きい」と購入をやめる場合もあるという。
付属のキャスターで家の中の移動もしやすい。「仕事中でもそばに置けて安心」とテレワーク中の保護者にも好評。6段階の高さ調節や、簡単に組み立てできる点など気配りが盛り込まれている。
ほかにも大人用ベッドに付けて安全に添い寝ができるベビーベッド「そいねーる」や、変形することで大人になっても使えるベビーチェア「すくすく」など、個性的な商品が多い。「物を提供するだけではなく、暮らしに変化を与えられるかどうか」が商品開発のカギとなっている。
顧客とのコミュニケーションの中でリアルな子育てを聞き、開発に生かしている。顧客へのヒアリングや子どもを持つ従業員が子育て相談に応じるなど、一歩踏み込んだ取り組みで顧客の悩みに対応する。
さらに同社で勤続1年3か月を迎える“子ども社員”も、商品開発に一役買っている。産休明けの女性社員が子どもを連れてきたのが始まりで、手作りの入社式などで辞令を交付。商品のモニタリングや、自社ショールームでの接客で活躍している。
メーカーとして培ってきた技術力を生かし、「(子ども用家具の)選択肢を幅広く提供していく」方針だ。(名古屋・岡林里奈)