テレワーク・5G・ゲームが通信量を圧迫、事業者は通信環境の質を保てるか
コロナ禍で緊急事態宣言が発出されたことに伴い、トラフィック(通信量)が増大している。ゲームのダウンロードや、ライブ配信の開始時刻になると急激に増加する事例もある。2020年春の緊急事態宣言発出時に通信速度が低下した経験などから、通信インフラの増強が必要と考えている生活者が多いとの調査結果も出た。通信会社やコンテンツ関連企業には、通信環境の維持や改善に向けた幅広い努力が求められる。(斎藤弘和)
NTT東日本によると、1月9日の土曜日から10日の日曜日における夜間ピークの通信量は、前週比16%増加した。20年2月29日―3月1日との比較では38%増えている。緊急事態宣言の発出を踏まえて外出を控える人が増え、結果として通信量も増大したようだ。
NTT東は、ライブやゲームによってトラフィックが左右された事例も示した。例えば、20年12月31日の20時―23時半は「国民的スーパーアイドル」(同社)のライブ配信が行われたことで通信量が急激に増大したものの、その配信が中断した21時半―22時の間は下がっていた。
また、有名ゲームの配信開始時には、ピークトラフィックが前日比20%上昇する場合もあるという。これらに加え、テレワークの普及や休校などで20年春以降、平日昼間の通信量も増えてきている。
だが、短期的には通信環境へ大きな支障が出る可能性は低いとみられる。NTT東は「これまでのピークトラフィック量を踏まえたネットワーク設計をしているため、現時点ではネットワーク全体の容量は十分に確保している」。野村総合研究所の桑津浩太郎研究理事は「通信事業者は、ピーク時対応さえしていれば、昼間のトラフィックが伸びることはそこまで問題ではない」と分析する。
コンテンツ関連企業も対策をしている。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE、東京都港区)は、家庭用ゲーム機「プレイステーション」のソフトについて、事前配信の枠組みを展開。消費者はゲームの発売日時よりも前にダウンロードをしておき、その日時になったらすぐに遊べる。SIEはこの仕組みを多くのゲームソフト発売元に採用してもらい、発売直後に通信量が急増する事態の防止にもつなげたい考えだ。
ただ、コロナ禍を機に、通信環境への生活者の目は厳しくなりつつある。総務省が20年12月に行ったアンケートの結果では、20年春の緊急事態宣言中は、同年の宣言前と比べて、携帯電話および固定インターネットの通信速度が「遅い」あるいは「不安定」と感じる人の割合が増加した。また、日本の通信インフラについて認識を聞いたところ、今後増強が必要との回答が56・5%を占めた。
テレワークの定着や第5世代通信(5G)普及に伴う大容量コンテンツの増加などにより、トラフィックの動向は予断を許さない。多様な関係者が連携して通信環境の質を保つ努力が、これまで以上に求められそうだ。