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医薬品や半導体材料で存在感、富士フイルムHD社長「全て根はつながっている」

富士フイルムHD・助野健児社長インタビュー

―2021年度から新しい中期経営計画をスタートします。

「ヘルスケア事業と高機能材料事業の成長を加速する。ヘルスケアではバイオ医薬品の開発・製造受託(CDMO)が伸びている。難病などの解決策として、バイオ医薬品の研究にさまざまなベンチャーが取り組んでいるが、均一に製造できるかは別問題。我々はフィルムで培った技術を生かし、安定的で効率的な生産が可能だ。半導体受託製造(ファウンドリー)のような存在になることができる」

―高機能材料事業では、特に半導体材料が好調です。

「在宅勤務の増加で、データセンター向けの半導体材料が堅調だ。先端半導体向けに、極端紫外線(EUV)に対応できる品質評価体制を設けた。ユーザーと一緒になって開発する体制はグローバルで整ってきている。第5世代通信(5G)や自動運転の普及などで、確実に伸びる分野だ。設備投資をし、技術力もある優位性を前面に押し出す」

―完全子会社化した富士ゼロックスの社名を4月に変更します。

「新たな枠組みで、ドキュメント事業のグローバル展開をどのように進めるかが課題。新型コロナウイルス感染拡大の影響で中計開始を20年度から21年度に変更したが、これはドキュメント事業の新たなスタートという面でも分かりやすいと考えた。(新中計では)日立製作所からの(買収を決めた)画像診断機器事業に関しても、大きなシナジー効果を生んでいきたい」

―今後も多角化を進めるのでしょうか。

「多角化というと少し語弊がある。デジタルカメラや化粧品、半導体材料などの事業があり、そう見えるかもしれない。しかし技術という面から見ると、全て根はつながっている。フィルムで培った技術が化粧品やCDMOに生きている。飛び地に行くことはしないが、外から技術を得ることで相乗効果を得られ、良いモノが提供できるのであれば、積極的にやっていく」

【記者の目/存在感発揮の機会増える】

新型コロナでドキュメント事業や光学デバイスなどのイメージング事業が苦戦するが、半導体材料など好調な事業が下支えし、20年度の当期利益は前期並みを見込む。「新型コロナ対応の目玉になった」(助野健児社長)抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」を含め、富士フイルムグループの製品が存在感を発揮する機会が増えている。(江上佑美子)

日刊工業新聞2021年1月11日

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