セイバンのビジネス用新カバン、ランドセルの製造ノウハウを“生かさなかった”理由
ランドセルの機能・耐久性を反映
セイバン(兵庫県たつの市、泉貴章社長)は、2020年11月にビジネスマン向けカバンの新ブランド「MONOLITH(モノリス)」を立ち上げた。自社オンラインストアを中心にバックパックや2WAYバッグ、トートバッグ、ショルダーバッグの4タイプ31種類を販売する。70年以上ランドセルを手がけてきたが、ビジネスカバンを扱うのは初めて。ランドセルに必要な機能性や耐久性を新製品に反映させた。
セイバンは年間30万個程度のランドセルを製造し、約70億円の年商を誇る。一方で、同社が事業の多角化を進めるのは国内ランドセル市場の拡大が見通せないからだ。
これまで少子化が進んでもランドセルの高機能化もあって単価は5万―8万円台と上昇が続いていた。ただ、近年は価格の横ばいが続く。そこで新事業を模索する中で出てきたのが、市場規模の大きいビジネスカバンだった。18年から1年間、市場調査を行った。
ランドセルは約250個ものパーツを組み立てて作る。縫製技術が求められるカバンとは作り方が異なる。カバンにランドセルの製造ノウハウは生かせないため、小学校6年間にわたって使える丈夫なランドセルのコンセプトを新ブランドへ継承させた。
ビジネスカバンは外側のポケットに磁石を付けてスマートフォンを入れた際に押さえて落ちないようにしたほか、急な雨でもカバン内部がぬれないようファスナーに止水機能を持たせた。サイズや種類によってそれぞれ異なるが、消費税抜きの価格は1万2000―4万4000円。
販売目標数は非公表だが、5年後には新カバンブランドや、数年前に始めた保育事業を含む新事業を売上高全体の2割に引き上げたい考えだ。これによりランドセル1本足からの脱却を目指す。桒田康治執行役員多角化推進部長は「30年先にはランドセルと新事業の売上比率が逆転しているかもしれない」とみている。(姫路・村上授)