AIとカメラでマッピングする“ぶつからない米製ドローン”、中国の巨人と差別化できる?
ぶつからないドローン、日本の法人市場開拓
ドローンメーカーの米スカイディオが日本事業を本格化する。2020年11月に日本法人を設立。NTTドコモなどと連携し法人市場を開拓する。同社は14年に米カリフォルニア州で設立。米グーグルや米テスラ、米アップルなどで腕を鳴らした先端技術者らが開発した、ぶつからないドローンが強みだ。日本事業の戦略をトム・モス日本法人最高経営責任者(CEO)に聞いた。
―スカイディオのドローンの特徴は。
「自律飛行が可能だ。視野角200度のカメラを全部で七つ搭載し、機体の周囲360度を把握する。複数のカメラが同じ位置を確認するため距離も測れる。ドローンが人工知能(AI)とカメラで周辺環境をマッピングするため、ぶつからない。全地球測位システム(GPS)を使わないので、室内や橋梁の下なども飛行可能だ」
―米国では消費者向けから事業を開始しました。
「ドローンがモノと人間を認識して追いかける。レジャーやスポーツで利用されている。対象が『これからどこに向かうか』という将来予測をマシンラーニングで実現する。ドローンは周辺に衝突しないようにしながら、対象を追尾する。これは当社の基幹となる重要な技術だ」
―なぜ日本を初の海外進出先に選んだのですか。
「当社のミッションはドローンで人間に降りかかる危険性を除外すること。日本は橋梁や道路など社会インフラが多い。災害も頻発するほか老朽化も課題。点検ニーズは高い一方、労働人口は減少している。自律飛行のドローンであれば動画や写真を内蔵メモリーに保存したり、クラウドに送ったりできるので現場作業を低減できる。当社が役に立てる領域だ」
―自律飛行の技術進化の方向は。
「自律飛行は例えばAからB地点へ移動する間に障害物があってもドローン自体が考えて回避する。この特性をより一層磨き上げ、風速30メートルの強風でも決まった位置に着陸できる自律飛行技術に挑戦している。これをマニュアル操作で実現することは難しい。将来は操縦者は必要なくなるだろう」
―21年の日本事業の方針は。
「事業拡大を加速したい。直接販売とパートナー経由での販売の両方で広げたい。日本だけでなくアジア太平洋地域の複数国にも展開したい」
【記者の目/中国DJIとの差別化カギ】
スカイディオは21年中にも日本で赤外線カメラを搭載した警察や消防向けドローン「X2」などの販売に乗り出し、企業向けドローンで存在感を高めたい考えだ。一方、ドローン業界では中国のDJI(広東省深圳市)がグローバルで大きなシェアを占める。強みである自律飛行のメリットを訴求し、DJIと差別化できるかがカギとなる。(川口拓洋)