営業形態を急速に変化させるIDEC、テレビ局のような自社スタジオで何をする?
IDECが営業形態を急速に変化させている。同社は、安全スイッチなど産業用の制御機器を手がける。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、従来の営業スタイルからの脱却が成長戦略に不可欠になると判断。国内営業部門を分社化し、営業所の集約にも乗り出した。一方、自社製作による映像コンテンツなど新サービスの積極活用で活路を開く。
IDECは2020年11月、国内営業部門を分社化した新子会社「IDECセールスサポート」を立ち上げた。IDEC本社(大阪市淀川区)内に拠点を置く新会社は21年4月に事業開始の予定。コロナ禍においてデジタルマーケティングを推進し、顧客拡大や商談フォローの迅速化、サービス向上などにつなげる。舩木俊之IDEC会長兼社長は「IDECはメーカー。営業担当者で成果の上がる人は当社の給与体系から離れ、(新しい営業会社の下で)やればやるほど評価されるようになる」と説明する。
さらに「(コロナ禍は営業を変える)チャンスでもある」(舩木会長兼社長)と指摘。新子会社の設立に伴い仙台や広島、岡山など既存の営業所の多くは大阪営業所(大阪市淀川区)、東京営業所(東京都港区)などに集約する。
【代理店に提案】
ただ、全国各地をベースにした営業活動からの撤退ではない。舩木会長兼社長は「事務所という場所にいる必要はない」とし、従来型の事務所に出勤する形式をやめるだけだと説く。各地で引き続き根を張る営業担当者は「販売代理店との連携強化。もちろん訪問活動は欠かせない。ただ自社の営業所に出勤するより、各営業担当者は自宅から代理店に直接行って提案する」(舩木会長兼社長)ことに汗をかく。
代理店はIDEC以外の製品も扱う。代理店ごとのやり方に同社もうまく合わせながら自社製品・サービスを顧客に行き届かせたい考えだ。「例えば製品とロボットの組み合わせなど代理店では難しい提案もある」(同)ため、代理店へのきめ細かな営業支援の体制を敷く。こうした積み重ねが代理店内でのシェア拡大にもつながるとみる。
【機能的に活動】
新たな営業基盤構築では自前の策も練る。「テレビ局のようなイメージ。コロナ禍の到来後、すぐに考えた」(同)。本社内の会議室や倉庫だった場所を改装し、スタジオを3カ所設けた。ここで製品紹介やセミナー、決算説明会など投資家向け広報(IR)活動といった幅広い映像コンテンツを配信する。社内スタジオによる自前の活動は外注に比べて「コスト、配信までの時間は3分の1になり機能的に動ける」(同)と力を込める。
従来は徐々に進めるところだが、今は「すぐやる」(同)のが基本路線だ。営業に関する伝票、請求書など紙ベースの書類も社内に入れず、クラウド化する。舩木会長兼社長は「今後はもっと勝ち負けがはっきりする」と予想するだけに営業改革を急ぎ、競争に打ち勝つ構えだ。(大阪編集委員・林武志)