「行動する文化に変えないと会社が持たない」。NEC・新野社長の危機感
―3カ年中期経営計画の総仕上げとなる2021年3月期はどう着地しますか。
「新型コロナウイルス第3波の影響はあるものの、20年9月以降、受注は戻り、当初計画は射程に入っている。中計で掲げた営業利益率5%以上、調整後の営業利益1650億円はきちんと達成する。やり切ることが一番大事だ」
―懸案だったグローバル部門(BU)の黒字化は。
「大きな赤字を出していたディスプレーとエネルギーの両事業は一定のめどがついた。一方で海底ケーブルは好調で、生体認証を軸とするセーフティー事業も着実だ。グローバルBUの黒字化は確実だが、当初の計画には届かず、1―3月期でいかに近づけるかだ」
―海外展開では新たにグローバルファイナンスを掲げています。勝算は。
「グローバルファイナンスは単独で挑むのではない。すべてがデジタル化する中で、グローバルガバメントと一体化となり、新しいデジタルサービスを提供する。いわゆる“外―外”の海外展開だけでなく、買収したデンマークのKMDやスイスのアバロックなどのノウハウを国内事業にも展開し、日本のデジタル化も加速する」
―4月に森田隆之次期社長にバトンタッチします。引き継ぐ思いとは。
「社員が強くなれば会社は強くなる。そうした思いから、18年度を起点とする中計では『カルチャー変革』を掲げ、社員一人ひとりの力をいかにして100%以上発揮させるかに注力してきた。併せて、外部人材の登用も進めた」
―その背景とは。
「当社はやり切る力を持っていたはずが、シュリンク(縮小)した文化に変わってきていることを感じた。もう一つは市場の変化。昔はユーザーの要望に応えればよかった。これからはユーザーが気づかぬことを我々が提案し、行動する文化にしないと、会社はもたない。約3年がたち、ようやく社員の意識が少しずつ変わってきたが、改革に終わりはなく、次期中計でも継続しなければならない」
【記者の目/副会長としての役割に注目】
買収をテコとする成長戦略のキーマンは最高財務責任者(CFO)の森田次期社長に他ならず、バトンタッチは既定路線といえる。新体制では、新野隆社長が代表権を持つ副会長となり、代表権者2人は当面、変わらない見込み。NECは過去に代表権者3人体制もあった。5カ年の次期中計での推移が注目される。(編集委員・斉藤実)